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【ニュースレターVol.4】
今回は、2025年の学会発表のご報告とまとめ。そして、改めて歯科矯正治療「ランパセラピー」について、ご紹介するとともに、歯と全身の健康との関係性について考えてみたいと思います。
ほとんどの不正咬合の原因は「上下顎の劣成長」
この劣成長は、呼吸機能の低下から、脳や体の酸素不足を招きます。RAMPAでは、今までの矯正治療では難しかった骨格の劣成長に直接アプローチ。中顔面の上前方方向への成長誘導から、健全な骨格の発達を促し、呼吸機能を改善します。その過程で歯が生える土台へと整えられるのが、ランパセラピーという矯正治療です。


【気道容積の測定】(左:治療前8,1cc 右:治療経過21,2cc)
審美のために抜歯をし、歯並びを整える――。当たり前のように聞く体験談です。民間の調査などによると、矯正治療を経験した人の6割程度は、抜歯を経験しているようです。
それで確かに歯並びは良くなるかもしれません。ある程度の年齢に達した大人の方ならば、話は分かりますし、その意義も確かにあります。しかし、これからを生きる子どもたちへと視点を移すと、果たして抜歯は、この先の人生に何の影響もないと言い切れるでしょうか?
子どもたちの将来的な成長を見据えたRAMPAの概念では、「抜歯は必要ない」ではなく、「抜歯はあり得ない」ものです。
「なぜ、抜歯をあり得ないとするのか――。」
これは、RAMPAの概念を象徴する言葉でもありますが、その理解には矯正治療の枠を超えた「骨格」という上位概念からの視点が必要です。理論のお話は機を改めますが、少なくとも、抜歯をしてまで歯を並べるという現実は、「骨格の劣成長」という「不正咬合の根本原因」に目を瞑り、「矯正治療=歯並びを整えるもの」との大義名分が、いかに私たちに染み付いているかを示しています。
審美を否定する意図はありません。大切な事だと思います。しかし、その一歩先にある、「歯並びが悪くなっている原因(=骨格の劣成長)」が、子どもたちの健康に及ぼしている悪影響については、広く認知されていないのが現状です。
だからこそ、「子どもの健康<審美=矯正治療」という、子どもを持つ親なら例外なく矛盾を抱える不等式が成り立ってしまっているのです。
もともと、ヒトの設計図では、土台となる骨格がしっかりと成長できていれば、歯は自然ときれいに生えてくるようにできています。しかし、上あごの骨が本来あるべき方向へ成長せず、ゆがみが生じてしまうのが、「中顔面※の下方成長」。その結果が、不正咬合の根本原因、「上下顎の劣成長」です。
この劣成長の影響は、不正咬合にとどまらず、気道や鼻腔の狭小化といった呼吸機能の問題をも引き起こします。そして「呼吸」とは、脳の発達など、全身の健康に影響する重要な機能です。
そこで、根本原因となっている「骨のゆがみ」を解消し、呼吸機能の改善を目指す。そのおまけとして、歯が自然ときれいに生えてくるような土台(骨格)に整えることができる、というのがランパセラピーです。
抜歯をしてまで歯を並べる矯正方法は、骨格の劣成長とそれによる健康への影響まで考慮されているのでしょうか。審美重視の従来の矯正治療の概念には疑問を感じます。
RAMPAによる上顎骨の上前方方向への成長誘導により、本来的な骨格を取り戻すことで、子どもたちの生涯にわたる健康資産を守ってあげることが、当院のミッションです。RAMPAであれば、「抜歯」はおろか、「手術」という、子どもたちにとって大きなリスクが避けられる可能性も高いのです。
これまで、ランパセラピーを通じ、鼻副鼻腔炎や、喘息・いびき・睡眠時無呼吸症候群など、さまざまなお悩みが根本から改善されています。これらの疾患は、総じて、脳と身体の酸素不足を招きます。
歯並びの悪さとは「審美」の観点だけで済まさず、全身の不調につながる「サイン」である可能性を、これからの矯正歯科は考えなくていけません。
※中顔面:上顎骨を中心とする骨の複合体。中顔面は本来上あごについた舌の働きによって、上前方へと成長するのが健全な成長ですが、舌が上あごにつかないことによって、重力の影響から下方へと成長方向を変えます。つまり、口呼吸がその要因となります。ガミーはそのわかりやすい例です。


【CTによる骨格の変化】
※左:RAMPAの装着時間が足りないと、赤矢印の限られた部分の変化になってしまいますが、
装着時間を守ることで、青丸のように中顔面全体が上前方へと成長します。中顔面が上前方へ成長することで、下顎も回転するように上がり、物理的に圧迫されていた気道が拡がります。
ではなぜ、「矯正治療=歯並び」との認識が一般化しているのでしょうか?
それは、従来の矯正歯科で行われる(手術によらない)歯列矯正では、骨格に対して、大きな実効力を持つアプローチが大変難しいということが挙げられます。そのため、長年にわたり、歯列へのアプローチが矯正歯科の基本であり、患者様が求める結果とされてきました。
骨格自体に大きな問題がないのならば、審美目的での矯正治療でも十分でしょう。
しかし、子どもたちを取り巻く環境は思いの外、厳しくなっています。当院の検査結果に照らせば、骨格に問題がみられないお子様はごく一部です。そしてこの骨格の問題は、呼吸機能の問題へと発展し、子どもたちの将来的なQOLの問題へとリンクしています。
例えば、歯科でのMFTに取り組まれているご家庭も多いことでしょう。「舌先をスポットにつけ、舌を上顎の正しい位置に置く」がMFTの基本です。しかしここで、もう一歩引いて見る必要があります。
舌先がスポットにつく正しい位置はOKでも、そのスポット自体は頭蓋骨の中で正しい位置でしょうか?
そもそも、上顎が下がってしまってはいないでしょうか。上顎が下がると、下顎も下がり、「舌を正しい位置に置く」といっても難易度が上がります。MFTは、舌の筋力不足による口呼吸には効果的かもしれませんが、下がってしまっている上顎の位置を上げることはできません。
骨格の正しい成長の上で行ってこそ、MFTはその価値を発揮します。それは審美的な歯列矯正も同様だと思います。
当院は2025年、ランパセラピーを通じた歯科領域以外の改善事例について、国内外のさまざまな学会で報告を行ってきました。
【国内学会・国際学会】※正しくお伝えするために英語表記としています。
・European Conference on Dentistry and Oral Health パリ
1. A case study of RAMPA therapy in a patient with Class I anterior crowding and asthma and chronic sinusitis: CT image evaluation
2. Increase of volumes in upper airways for Antley-Bixler and Down Syndrome patients through RAMPA Therapy
・MENA Congress for Rare Diseases アブダビ
1. Treatment of Down syndrome patients using RAMPA therapy:Craniomaxillofacial growth guidance method
2. Treatment of Arnold Chiari Malformation patients using RAMPA therapy:Craniomaxillofacial growth guidance method
・日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
1. RAMPA療法を受けたダウン症候群児の呼吸症状の改善
・DownSyndrome ダラス
1. Nonsurgical Treatment of Down syndrome patients using RAMPA therapy:Craniomaxillofacial growth guidance method
2. Improvement of respiratory symptoms in patients with rare diseases reated with RAMPA therapy
・CMBBE バルセロナ
1. Nonsurgical Treatment of Arnold chiari malformation patients using RAMPA therapy: Craniomaxillofacial growth guidance method
2. Improvement of respiratory symptoms in a child with Antley-Bixler syndrome treated with RAMPA therapy
・日本鼻科学会
1. 非外科的RAMPA療法による患者の気道容積増加に関する統計分析
2. RAMPA療法による鼻閉患者の気道容積増加に関する統計分析
【主な報告内容】
上記学会では、主に、ダウン症のお子様、キアリ症候群のお子様、アンドレ―ビクスラー症候群のお子様の治療経過と改善事例を報告しました。
・ダウン症のお子様の事例︓RAMPAにより鼻副鼻腔と気道の容積が増加し、 睡眠時無呼吸やいびき、鼻閉が改善。
・アーノルド・キアリ症候群のお子様の事例︓通常より低い位置にあった小脳の位置が上がり、水頭症や構音障がいが大きく改善
・アントレー・ビクスラー症候群のお子様の事例︓気道容積が約2倍に拡大し、呼吸困難や中耳炎、いびきなどが改善。※アントレー・ビクスラー症候群患者は約54%が 呼吸困難で早期死亡するとされており、RAPMAによる気道容積の拡大は、生命維持にかかわる重要な改善をもたらしました。
■ダウン症のお子様の改善例

【治療前後の骨格形態の比較】(青色がRAMPAによって変化した部分)


【CTによる鼻腔体積の測定】(左:治療前11,838立方mm 右:治療経過14,106立方mm)
RAMPAがこれらの疾患自体に劇的な改善をもたらしたわけではありません。しかし呼吸とは、生物において最も基本的で重要な事柄の一つです。これらの先天性疾患を持つ子どもたちは、骨格の発達不良がより顕著に見られ、RAMPAによる大幅なQOL向上が見込める事例です。
しかし、骨格の発達不良とは、決して一部の子どもの話ではありません。必要十分な呼吸量と子どもたちの未来から考えれば、幼少期に明確な自覚症状がないからといって、この先も問題ないとは言い切れないはずです。良いにしろ、悪いにしろ、子どもの成長は続くのですから。
矯正治療の意義とは?「審美」とは骨格の劣成長に目を瞑るほど大切なことなのでしょうか?
最近では「歯並びの根本治療」と訴求する情報発信も溢れています。しかし、真の意味で「根本治療」を掲げるならば、全身の健康への影響まで視野に入れ、かつその治療に実効力がなければならない。患者様はその言葉を頼りに来院されるのです。
医療の基本とは「手当」です。SNSと検索の時代、医療とは果たして、「手当とビジネス」、表と裏を履き違えていないのか?
当院はRAMPAの意義を患者様に、そして社会に伝えていく責任と使命感から、学会への発表や医科歯科の垣根を超えた連携を続けています。当院もまだまだ学ぶ立場です。真の医療人に学ぶことは、楽しく、未来に満ち溢れています。
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🏥こどもと女性の歯科クリニック
✧ 日本に2件の小児矯正「ランパセラピー」専門
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ランパセラピーって?
中顔面の発達をサポートすることで、歯列のみならず、呼吸器疾患や耳鼻疾患の問題を改善していくことを目的としている矯正治療
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