blog
【ニュースレターVol.6】
最近では、小児の矯正治療に関して、「根本治療」、「学力・脳力」への訴求のような歯科発信が見受けられます。インターネット上の情報は、玉石混淆状態で、情報を選択する側も大変です。先日、某ラジオ局の方とお話しした際に、メディアのあり方がこれで正しいはずがない。この傾向はいずれ収束し、多様さこそあれど、言葉に熱量と信念のある発信が勝つとおっしゃっていました。一人の消費者としても、そうあって欲しいと思います。メディアのプロとしての矜持と危機感も感じました。
今回のレターの核心は、矯正治療法の違いのご紹介でも、他の矯正治療の批判でもありません。 当院が何を考えて、日々診療しているのか?それらを知っていただきたい。単なる一クリニックの意見だとしても不快感を持たれる方がいらっしゃるかもしれません。その際はご容赦いただき、そっとページを閉じてください
従来の矯正歯科で、お子様の矯正相談を受けられた際、歯並びが悪くなる原因を「顎が小さいこと」や「遺伝(で顎が小さい)」と説明されることが多いのではないでしょうか?インターネット上でもよく見かけます。
しかしです。既存の矯正治療の多くは、その原因の解消を追求する治療にはなっていません。(原因はともかく)悪くなってしまった歯並びを「整えましょう」というのが、既存の矯正治療です。その原因が取るに足らない問題ならば、歯列に焦点を当てる「審美矯正」で意義は十分です。
ただ、「必ずしもそうではない」というのが、RAMPAの考えです。
「顎が小さい」からであろうが、「遺伝」だからだろうが、歯がきれいに生えてこられないのは、骨格の問題と、よくよく考えればそう指摘されています。RAMPAの視点から、具体的に言うとそれは「上下の顎の劣成長」。そこに遺伝的要素があったとしても、顎が小さいことは一緒です。
「受け口(反対咬合)」や「出っ歯(上顎前突)」も同じ。遺伝的要素があったにしても、その原因の多くは「上下の顎の劣成長」。必ずしも上下どちらかの過成長ではありません。ですので、単純に「受け口は下顎を引っ込める」「出っ歯は上顎を引っ込める」という発想は、全ての症例に機械的に当てはまる発想ではありません。
そして、さまざまな器官が密集する頭蓋骨の中で、大きなウェイトを占める「上下の顎の骨」の劣成長の影響が、不正咬合の問題だけで済むはずもなく、生物の大切なライフラインである「呼吸」の問題が、この劣成長には関わっています。
ここがポイントです。
上下顎の劣成長は、空気の通り道である、気道や鼻腔を狭くしてしまいます。明確な症状として表出するかどうかには個人差もありますが、自覚症状の有無に関わらず、大多数の子どもたちは、常に酸素不足のリスクに晒されています。
だから矯正治療を通じた呼吸の改善による、「学力・脳力の向上」という発信が成り立ちます。骨格へのアプローチによる「根本治療」という発信も、原因の重大性から訴求されています。
ならば、治療では「気道や鼻腔の通気性」の検証は行われているはずですが、症例写真には歯並びばかりが並びます。なぜなのでしょうか?


耳触りのよい言葉も危機感に訴えるような言葉も、マーケティング観点では致し方のないことなのでしょうが、それらの情報の中から親御様は判断しなくてはなりません。そして私たちは医療として、皆様の未来に関わっている責任があります。
お子様の歯並びが悪い原因とその影響を知ること。そしてその治療で本当に改善が期待できるのかの判断に納得ができること。この二つが親御様に覚えておいてほしいことです。
骨格に大きな問題がない場合には、審美目的の既存の矯正治療で目的は果たせます。しかし、この骨格の問題のきっかけは「口呼吸」です。少なくないお子様に、この骨格の問題が当てはまります。「顎が小さい」とよく言われるわけです。
・ワイヤー矯正
ブラケット矯正とも呼ばれる一般的な矯正治療です。多様な不正歯列に対応可能ですが、基本的には装置の取り外しはできません。見た目に抵抗がある方へは、目立ちにくいタイプや歯の裏側に装着できるタイプもあります。これらは舌側矯正・裏側矯正ともいわれます。主に永久歯に生え変わった後に使用されることが多いので、小児矯正という括りは少し異なるかもしれません。

・マウスピース矯正
最新の矯正治療と思われる方が多いのですが、マウスピース型の矯正治療は以前からあり、最新の発想ではありません。比較的安価で目立ちにくいことから、経済的なご負担が軽くなり、矯正治療に対するハードルは低くなります。その分、適応症例は比較的軽度な不正歯列に限られます。

・床矯正
拡大床という装置を使用して行います。小児の一期矯正で使用されることが多いです。「永久歯が生えるスペースが足りない」と予想されるときに使われますが、床矯正で拡げるのは主に歯列です。
※ワイヤー矯正とマウスピース矯正、そして床矯正は、主に「歯列」に作用する矯正治療です。限られたスペースの中で歯を動かし、歯並びを整える、もしくはスペースを作ります。顎の骨格には直接作用しません。この部分は必ずご理解ください。歯列を拡げるのには限界があります。だから抜歯という選択肢が出てきてしまうんですね。ここでまず矯正治療の目的と選択肢が分かれます。
・MFT
「治療」というよりは、お口のトレーニングといった理解が分かりやすいです。舌や咀嚼筋などの、お口を取り巻く筋肉の機能を改善し、正しい口腔環境に整えようとの考え方に基づきますが、改善というよりは、予防的な側面が強くなります。装置を使用しない「機能的矯正」といわれることもあります。
商品名の紹介は控えますが、根本治療を訴求する小児のマウスピース矯正は、装置を使用する機能的矯正となります。
・顎顔面矯正
急速拡大装置といわれる装置を使用して行います。口蓋(上顎の天井部分)の正中口蓋縫合(口蓋中心の前後のライン)を装置で離開して、上顎のスペースを拡げようというのが、基本の考え方です。
名称や訴求内容は似ていますが、「顎顔面口腔育成治療」とは異なる治療です。悪質さを感じましたので、あえてお伝えいたしますが、顎顔面矯正を扱う医院で、安易に「ランパセラピーとほとんど一緒」と説明を受けた患者様がいらっしゃいます。真摯に取り組んでいる医院はもちろん、患者様をなんだと思っているのかと憤りを感じます。
・顎顔面口腔育成療法
バイオブロックセラピーとランパセラピーでは使用する装置などが異なりますが、矯正装置と人の成長力を利用して、お口まわりの骨格を健全な形に整えようというのが、基本の考え方です。バイオブロックセラピーを源流に持つランパセラピーですが、現在は独自の道を進んでいます。
余談:
RAMPAをより深く調べていくと、海外にもRAMPAという治療がある。韓国で発信されているRAMPAがある。これらに気が付く方がいらっしゃいます。率直にすごいです。まず、韓国の件については、開発者の三谷医師は韓国でもRAMPAの普及に取り組んでいます。研究チームには当院も積極的に参加し、韓国の研究者も参加しています。そういう背景です。
より話をややこしくしているのが、別のRAMPAの存在です。しかも、これはバイオブロックの生みの親であるジョンミュー先生の息子のマイクミュー氏が発信していることが、さらに危うい権威性を持たせます。皆様には直接の関わりがありませんし、海外の話なのでお伝えいたしますが、二つのRAMPAは全く異なるものですし、品のない言い方になりますが、ミュー氏の掲げるRAMPAの名称は後付けの「パクリ」です。あえて同じ名称にするなど困った話です。ランパ(RAMPA)セラピーは、日本で開発され進化している治療です。

※これらが、呼吸を視野に入れ、根本治療と訴求されている矯正治療です。そして根本治療で最も大切な目標が「鼻呼吸」。そのためには、鼻腔と気道に十分な通気性があり、なおかつ舌が上顎につかなくてはなりません。どれが欠けても口呼吸です。だから矯正治療では、耳鼻科の受診を勧められます。これら根本治療とされる治療は、歯科的アプローチから耳鼻科領域へ関わります。
Q:鼻腔が狭いのならば拡げてあげる。そのために何が必要か?
・A:上顎をあげてあげなくてはなりません。
Q:どうして鼻腔が狭くなったか?
・A:中顔面(上顎)の下方成長によって、骨格にネガティブな変化が起きているからです。
Q:気道が狭いならば拡げてあげる。そのために何が必要か?答えは同じです。
・A:上顎はあげてあげなくてはなりません。
Q:どうして気道が狭くなったか?
・A:中顔面(上顎)の下方成長によって、骨格にネガティブな変化が起きているからです。つまり、それに連動して下顎も下がり、物理的に気道を圧迫します。あわせて舌の位置も下がります。
治療によって、上顎が上がれば、下顎も連動して上がり、気道の圧迫から開放されます。そして舌の位置も上がり、上顎につきやすくなります。基本的に上顎の位置が上がり、骨格のゆがみが改善され、舌が上顎につくようになれば、歯とは自然と並びます。
耳鼻科とも連携し、気道や鼻腔の通気性、歯並び、骨格の変化を総合的に診査しながら、当院のランパセラピーはゴールへと向かいます。


さて、これらの矯正治療は過程が違うだけで、同じ結果を期待できるものなのか?当院はランパセラピー専門医院ですので、他の矯正治療にそれほど深い知見はありません。他の治療への安易な見解ではなく、口呼吸を鼻呼吸に変える、骨格の変化を間近でみている者としての率直な気持ちです。
・叢生(そうせい)
「乱杭歯(らんぐいば)」ともいわれる不正咬合です。歯と歯槽骨の大きさのバランスが悪く、デコボコとした歯並びの状態を指します。

・上顎前突(じょうがくぜんとつ)
一般的には「出っ歯」といわれることが多いです。上の歯が前に出ていて、上下の前歯が噛み合わない状態を指します。

・反対咬合(はんたいこうごう)
一般的には「受け口」といわれることが多いです。下の歯が前に出ている、または下の顎が前に出ている、もしくはその両方の状態があります。

・開咬(かいこう)
奥歯を噛みしめた際に、前歯が噛み合わず、上下の前歯の間に隙間がある状態の不正咬合を指します。

・過蓋咬合(かがいこうごう)
上側の前歯が下側の前歯に過剰に覆いかぶさった状態の不正咬合を指します。噛み合わせが深いと表現されることもあります。

他にも交叉咬合・切端咬合・空隙歯列(すきっ歯)など、不正咬合には様々な状態があります。ガミー(スマイル)でお悩みのご家庭も増えています。歯科の発信では、これらのそれぞれに「原因」が示されていると思います。ただ原因の多くと、治療でアプローチするものは大きくリンクしません。「審美」が矯正歯科のメインフィールドだからです。これは現状では仕方のないことです。
取り返しのつかないような「抜歯が必要」や「受け口(出っ歯)は出ている方を引っ込める」という説明には、まず頭の片隅に疑問を持ち、その疑問が解消されて納得をしてから行動されてください。歯列への作用力ならばワイヤー矯正なのは確かです。
先ほどの小児矯正のお話しでも同じ気持ちを持ちましたが、根本治療を掲げるにしても、それらで多様な不正咬合に対応ができるのかも率直に心配です。客観的にそれが可能なのであればRAMPAの存在意義は揺らぎますが、不思議とその存在意義を疑う気持ちは湧いてきません。
外科手術対応の不正咬合であっても、骨格の改善はミリ単位の変化が限界です。それでも、手術の順番待ちが現実だそうです。
ランパセラピーでは歯並びが悪くなる根本原因を「骨格の劣成長」と結論づけています。その劣成長へと直接アプローチすることで、骨格の健全な成長を促し、多様な不正咬合と呼吸の問題に向き合っています。もちろんRAMPAであっても万能ではありません。情報過多の時代、親御様の判断がとても大切です。
••┈┈┈┈┈┈┈••
🏥こどもと女性の歯科クリニック
✧ 日本に2件の小児矯正「ランパセラピー」専門
••┈┈┈┈┈┈┈••
ランパセラピーって?
中顔面の発達をサポートすることで、歯列のみならず、呼吸器疾患や耳鼻疾患の問題を改善していくことを目的としている矯正治療
••┈┈┈┈┈┈┈••
RESERVATION
当院は完全予約制で診療を行っています。
ご予約はお電話・オンラインで承っております。
お急ぎの方は、お電話で一度お問い合わせください。
休診日: 金・日・祝
学会出席・研修・祝祭日により、診療日・休診日が変更になる場合が御座います。