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「遺伝だから仕方ない?」に違和感を持ってください

【ブログ:Vol.6】

遺伝よりも「なぜそう育ったのか」を考える小児矯正

矯正歯科に相談に行ったとき、こんな説明を受けたことはありませんか。

「顎が小さいですね。遺伝でしょう。」

私は、この言葉を聞くたびに問いたくなります。

「その判断のために、遺伝子検査をしましたか?」

していないはずです。親御様やご兄弟の顔の傾向から、イメージしているだけです。それを遺伝と言い切ることに、医療者として違和感を覚えます。遺伝とは原因ではなく「傾向」、そう捉えてみてください。治療で向き合うのは遺伝子ではなく、そもそもの「原因」なのです。

■最近気になっていること|「根本治療」という言葉が増えています

インターネット上の歯科発信に、「根本治療」「学力・脳力の向上」という言葉が増えています。私はそれを、単純に批判したいわけではありません。

ただ、確認したいことがあります。

根本治療を謳うなら、骨格・呼吸への介入が不可欠です。ならば、気道や鼻腔の改善を示す検査結果があるはずです。でも、症例写真には歯並びのビフォーアフターばかりが並びます。なぜなのでしょうか。

先日、ラジオ局のメディアのプロとお話しした際に、こんな言葉をおっしゃっていました。「今の情報過多のあり方が正しいはずがない。いずれ収束し、言葉に熱量と信念のある発信だけが残る。」

私も、そうであってほしいと思います。

■「顎が小さいのは遺伝だから仕方ない」という説明の違和感

近代化に伴って、顎の劣成長や歯列不正が急速に増えてきたことが、人類学や進化生物学の分野でも指摘されています。数百年という短期間では遺伝子そのものが急激に変化したとは考えにくく、この現象は環境要因の影響が大きい可能性が示唆されています。

顎が小さいことに、遺伝が全く関係しないとは思いません。でも、遺伝はあくまで「傾向」を決めるものです。その傾向の中でどう育つかは、口呼吸、舌の位置、姿勢、咀嚼といった環境要因によって大きく変わります。

歯並びに悪さには、人類学的な影響、親御様から受け継いだ傾向もあるかもしれません。ですが「顎が小さい」の本質は、上下の顎の劣成長です。受け口も、出っ歯も、ガタガタの歯並びも、その多くは「上下の顎がともに正しく育っていない」ことからきています。

例え遺伝的な要素があったとしても、成長期の骨格に働きかけることで、改善できるケースは多くあります。「遺伝だから仕方ない」と、検査もなく結論づけてしまうのは、早計だと思っています。

■顎の劣成長は、呼吸の問題に直結している

歯並びの問題は、「歯並びだけ」の問題で済まないことがあります。上下の顎の劣成長の原因とは「口呼吸」。口呼吸では、舌が上顎を支える役割を果たせず、顎が狭くなり、かつ重力の影響により下に落ちます。顎が狭くなることで起きるのが「歯並びの問題」です。

もう一方、上顎が本来の位置より下に落ちると、構造的に鼻腔と気道が狭くなります。自覚症状があるかどうかに関わらず、この状態にある子どもたちも少なくありません。

だからこそ、私たちは骨格の問題を、歯並びの問題として切り分けずに診ています。

鼻呼吸ができていれば、舌は上顎に収まりやすくなります。舌が上顎に収まれば、上顎は内側から支えられ、本来の方向に育っていきます。歯並びは、その結果としてついてきます。

逆に言えば、口呼吸が残ったまま歯並びだけを整えても、根本は変わりません。

これらが、歯科発信による「根本治療」、呼吸の改善による「学力・脳力の向上」の理屈です。ですが、これはあくまで理屈です。できるかどうかは別の話です。

■RAMPAが目指しているもの|歯ではなく骨格へのアプローチ

ランパセラピー(小児矯正)による気道容積の変化を示すレントゲン

RAMPAによる気道容積の変化イメージ

RAMPA前後の鼻腔容積の変化を示すレントゲン

RAMPAによる鼻副鼻腔容積の変化イメージ

それが発信通りにできるのならば、治療の現場では「気道や鼻腔の通気性」の検証が行われているはずですが、症例写真には歯並びのビフォーアフターばかりが並びます。

私たちは医療として、皆様の未来に関わる責任があります。

お子様の歯並びが悪い原因とその影響を知ること。そして、その治療で本当に改善が期待できるのかに納得ができること。親御様には、この2つを覚えておいていただきたいです。

骨格に大きな問題がない場合には、審美目的の既存の矯正治療で目的は果たせます。しかし、この骨格の問題のきっかけは「口呼吸」、つまり舌が上顎につかない状況が主だと考えています。となれば、少なくないお子様に、この骨格の問題が当てはまります。「顎が小さい」とよく言われるわけです。

近年、歯並びが悪くなった子どもたちが多くなったことを「遺伝」では説明しきれませんが、口呼吸の子どもたちが多くなったことがその原因なら、「舌、上顎、鼻腔、気道、歯並び」を通して説明はつきます。

遺伝だから仕方ないではありません。遺伝だろうがなんだろうが、取り組むべきは骨格なのです。既存の矯正治療では、そこに限界があるから「仕方ない」と着地してしまうのです。

■情報過多の時代に親御様へ伝えたいこと

こどもと女性の歯科クリニック

どの治療を選ぶにしても、治療の前に必ず確認してほしいことがあります。

「なぜ歯並びが悪くなったのか、説明を受けましたか?」

原因への言及と評価なしに、治療だけを勧める説明には、どうか疑問を持ってください。

その疑問が解消されて、初めて「納得した選択」になります。

ランパセラピーを「信じてください」とは言いません。判断する材料を、できる限りお渡しすること。それが医療者の責任だと考えています。

参考文献:

Kahn S, Ehrlich P, Feldman M, Sapolsky R, Wong S.

The Jaw Epidemic: Recognition, Origins, Cures, and Prevention.

BioScience. 2020;70(9):759-771.

PubMed
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32973408/

全文
https://academic.oup.com/bioscience/article/70/9/759/5872832

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