コラム
子どものまだ健康な歯を抜かないために|歯列拡大と上顎骨拡大という二つの選択にある違い
抜歯矯正では呼吸と骨格は取り戻せない 自然に治ることに賭けない|抜けば並ぶ「✕」
子どもの矯正では、永久歯が生え揃ってから「抜く・抜かない」を考えるのではなく、成長期に歯が並ぶ骨格そのものをどう育てるかが重要です。
「抜けば、並ぶ」、安易に考えないでください。
将来、抜歯が必要になる大きな理由は、永久歯が並ぶスペースの不足。当院では、その原因を「顎が小さいから」で終わらせず、なぜ顎が十分に育たなかったのか、そこから考えます。
「お子様のまだ健康な歯を抜きたくない」と思うのは、当然の想いです。
なぜ、歯が並ぶスペースがなくなったのでしょうか。
歯が大きすぎるからだけではありません。多くの場合、歯が並ぶはずだった顎の骨が、本来の大きさまで育たなかったからです。
「顎が小さい」、このような説明をされることが多いでしょう。だからといって、健康な歯を抜くのに、抵抗があるのは自然です。
顎が育たなかった理由の多くは、口呼吸です。舌が上顎から離れた状態が続くと、上顎は内側からの支えを失い、横にも前にも拡がることができません。
抜歯矯正とは、「スペースがない」という結果に対する対処であって、「なぜスペースがなくなったか」という原因には触れてはいないのです。
子どもの矯正で、なぜ抜歯が必要になるのか
矯正治療で抜歯が検討される大きな理由は、歯をきれいに並べるためのスペースが足りないことです。
永久歯が並ぶ場所が不足していれば、歯は重なり、前後にずれ、ガタガタの歯並びになります。
その状態から歯をきれいに並べようとすれば、何らかの方法でスペースを作らなくてはいけません。
その方法の一つが「抜歯」です。
健康な永久歯を一本、あるいは複数本抜くことで空間をつくり、そのスペースを利用して残った歯を移動させます。
また、歯のガタガタだけではなく、前歯が大きく前方へ出ている場合などにも、前歯を後方へ移動させるスペースを作る目的で抜歯が選択されることがあります。
ここまでは、矯正治療として理屈の通った考え方です。
ただ、当院が考えたいのは、その一つ前です。
なぜ、健康な永久歯を全部並べるだけの場所がなくなったのでしょうか。
「顎が小さいから」
「歯が大きいから」
そこで説明を終えてしまえば、最終的には「だから抜歯しましょう」という結論になります。
しかし、お子様はまだ成長の途中です。
大人の完成した骨格で「今あるスペースをどう使うか」を考えることと、これから成長する子どもの骨格で「歯が並べる土台をどう育てるか」を考えることは、同じではありません。
抜くか、抜かないかを考える前に、なぜ抜かなければ並ばない骨格になったのか。
小児矯正だからこそ、そこまで遡って考える必要があります。
抜歯矯正への見解は分かれます
まずご理解をいただきたいのが、小児矯正と成人矯正は、年齢によって区別されているわけではありません。歯科的には、永久歯が生え揃った時点で「大人のお口」とされます。小児矯正とは、永久歯が生え揃う前に行う矯正治療です。
ですので、多くの小児矯正は、大人の矯正治療とは目的が異なり、乳歯から永久歯への生え変わりを見据えています。
だから、「一期矯正・二期矯正」とセットで考えられています。
歯は生え変わり、その大きさも異なります。考えてみれば当たり前のことですが、「だったら小児矯正って何…?」は大切な気付きです。
決して、小児矯正が永久歯列以前の歯並びを軽視するわけではありませんが、子どものうちに対処しておけば、「大人になってからの矯正の負担が軽くなる」、つまり「よりよい結果を得るための準備」に目的を置いています。
だったら矯正は後からでもいいんじゃないか?とは思われますね。そのような判断でもよいお子様もいらっしゃいますし、そのような考えを持つ歯科医師もいます。このようなドクターの多くは「抜歯肯定派、もしくは抜歯は仕方がない派」です。
矯正治療では「なぜ、抜歯が必要になる場合があるのか?」
この小さな疑問から、RAMPAへの理解は始まります。
矯正治療を「骨格」から考えるRAMPAでは、子どもの抜歯は「必要不必要の議論」ではなく、「ありえない」ものです。
従来の小児矯正が「歯列のスペース不足」に着目するのに対し、RAMPAでは「骨格の劣成長」に着目する点に大きな違いがあります。
子どもの骨格の正しい成長を疎かにし、抜歯を「やむなし」とするほど、審美とは大切なものでしょうか?何かを犠牲にしてはいないでしょうか?骨格の正しい成長とは、歯のためだけの話ではありません。
RAMPAの装置では、上顎を健全な成長方向へと誘導し、顎の骨格を整えます。矯正治療を受けた方の、約6割が抜歯を経験しているともいいます。従来の矯正治療に「抜歯の懸念が付いて回る」ということは、それらでは「骨格の劣成長に対する根本的対処」に限界があることを示しています。
危ういのは、骨格の劣成長による影響が必ずしも考慮されているとは限らないことです。最近では、矯正治療を「投資」と解釈される風潮もあります。そのような側面は確かにあります。
そこで大事にしてほしい理解は「歯並びの改善」とは、必ずしもリターンではないということ。もともと土台さえ成長できれば、歯とは自然と並ぶようにできています。従来の矯正治療とは、骨格の劣成長への対処が難しいから「せめて歯並び」という「損切り」なのかもしれません。
「様子見」の先に抜歯がある理由
「永久歯が生え揃うまで様子を見ましょう」
多くの歯科医院で、何気なく掛けられるこの言葉。しかし、この「様子見」こそが、将来的に「健康な歯を抜いて並べる(抜歯矯正)」という選択肢しか残らなくなる最大の原因です。
歯科医師が「様子見」と話す時、それは必ずしも「成長とともに自然に治る」ことを意味しません。多くの場合、「現時点では、まだやることがない(永久歯が並びきってから、抜いて並べる)」という、治療側の消極的な判断を含んでいます。「矯正治療=歯列」だからです。
しかし、子どもの骨格的な成長には「時期」があります。その期間を「様子見」という名目の放置で過ごすことは「歯を抜く前に骨格を成長させる可能性」をみすみす見逃していることになります。
当院の考えは違います
多くの子どもたちにとって、小児矯正の意義はあります。
ただしこれは「根本からの改善による小児矯正」の場合。もちろん、歯列矯正で完結するお子様もいます。従来の矯正治療の歯列へのアプローチは、骨格という原因とそのリスクが考慮されていない可能性があるということです。
歯並びが悪くなるのには、土台の骨格の成長が深く関わります。小児矯正のタイミングを様子見・放置している間も、骨格の成長は待ってくれません。
少なくとも、お子様の歯並びが悪くなりそうな予感がする。でしたら、すでに骨格の劣成長の入り口に立っている可能性があります。「歯列=矯正」の考え方はリスクです。骨格の劣成長には「呼吸」が関わります。
これらの視点が、ランパセラピーの特徴と独自性です。顎の骨格さえ正しく成長できれば、歯は勝手に並んで生えてきます。成長が思うようにできなかったので、ガタガタの歯並びになってしまうのです。
本来そう成長したであろう正しい骨格を可能な限り取り戻し、失ってしまった「呼吸機能」と「口腔機能(歯並び含む)」を取り戻すための治療が「ランパセラピー」です。
当院では、親御様の判断による「様子見」はおすすめいたしません。危機感を煽りたいのではありません。検査をしてもらって、安心が得られればそれが何よりです。ただ、骨格の成長とはほぼ不可逆の流れです。原因を放置している限り、その流れを止める理屈がありません。だから危ういのです。
私たちは抜歯を考えません
お子様の矯正治療に踏ん切りがなかなかつかないということは「決め手がない」の裏返しがあるかもしれません。
抜歯もそう簡単に受け入れ難い。
お子様の現状と費用まで考えた場合、よほどでなければそうお考えになるのは自然です。
多くのご家庭がお悩みになられている矯正治療のご負担と「一見よほどではない現状」では、踏ん切りがつかないのも仕方ありません。ただ、それを踏み越えて矯正治療という行動に移されたご家庭でも、疑問が燻り続け、ランパセラピーにたどり着く親御様がいらっしゃいます。
- 注目は、その親御様の行動は「なぜか?」ということです。これは、小児矯正をご検討中の親御様にとって、大切な気付きの機会です。
歯並びの悪化は、骨格的な原因による場合が多いです。その兆しがすでにあるならば、おそらく悪循環に足を踏み入れています。そうなった場合、時間の経過とともに自然に解消することはまずありませんし、歯列へのアプローチでは何かがずれています。
- 結局、頑張りましょうと言われるだけ。
- 結局、抜歯が必要だと指摘される。
これらが、親御様たちが直感的に感じ取った「違和感」です。
当院のスタンスからいえば、小児矯正は必要不必要の議論ではなくて、絶対的に必要。ただしそれは骨格の改善によるものであるべきです。
一般的な矯正治療がその意義を発揮するのは、原因として骨格的に問題がなく、歯並びを整える程度で治療が完結する場合です。この場合、抜歯の可能性は大きくないはずです。
親御様が矯正治療を経験されているならば、なおさら「抜歯はさせたくない」や「矯正治療に抜歯はつきもの」など経験に基づいたお考えはあると思います。
ランパセラピーはこう考えています。小児の矯正治療の流れの中で、抜歯の判断は「ない」です。
抜歯矯正を回避し、本来の健やかな成長を取り戻すためには「上顎骨の拡大」が重要です。しかし、「拡大」という言葉の意味は、手法によって全く異なります。
「拡大」という言葉が、二つの意味で使われています
抜歯を避けるために「顎を拡げましょう」と説明されることがあります。ですが、ここで拡げられているものが何なのかは、確認が必要です。
床矯正で用いられる拡大床が拡げているのは、歯列です。顎の骨そのものではありません。歯は歯槽骨という骨に埋まっていて、その歯槽骨は上顎骨の一部です。拡大床がしているのは、その歯槽骨の中で歯を外側へ傾けていくこと。歯の位置は変わり、歯列の幅も変わりますが、土台である上顎骨の大きさは変わっていません。
これは当院の見解ではなく、矯正歯科の領域では争いのない事実です。専門医の団体も、都道府県の歯科医師会も、同じ内容を公表しています。
歯列を拡げれば、確かにスペースは少し生まれます。ですが、歯を外側へ傾けられる範囲には限りがあります。土台の外へは出せません。だから、足りなければ抜歯という判断が出てきます。
同じ「拡大」でも、歯列を拡げるのか、骨格そのものの成長方向に働きかけるのか。抜歯を避けられるかどうかは、ここで分かれます。
| RAMPA | 拡大床矯正 | |
|---|---|---|
| 拡大方向 | 三次元(上前方) | 二次元(主に横方向) |
| 主な対象 | 上下顎のゆがみ(骨格) | 歯を並べるスペース(歯列) |
| 期待できる効果 | 歯並び+呼吸の改善 | 歯並びの改善(二期あり) |
| 装置の種類 | 口腔内+口腔外装置 | 口腔内装置 |
| 抜歯の懸念 | ほぼない | 生じる場合がある |
抜歯は、原因に触れないだけではありません
抜歯矯正で選ばれることが多いのは、小臼歯です。前から4番目、あるいは5番目の歯を上下左右で抜き、そこにできたスペースを使って、前歯を後ろへ下げていきます。
歯は並びます。見た目は整います。
ですが、ここで何が起きているかを考えてみてください。
歯列全体が後ろへ下がるということは、その内側にある舌の居場所が、狭くなるということです。
冒頭でお伝えした通り、顎が育たなかった理由の多くは口呼吸です。舌が上顎から離れ、内側からの支えを失った上顎は、本来の方向へ拡がることができません。
つまり、必要なのは舌が上顎に収まることです。
それなのに、舌の収まる場所をさらに狭くするかもしれない。原因に触れないどころか、原因の側を強めてしまう可能性があります。
歯並びは整った。けれど口呼吸は残っている。上顎は下がったままで、鼻腔も気道も狭いまま。そして口呼吸が残っている以上、整えた歯並びが戻ってしまうことも起こりえます。
「抜けば並ぶ」は、並べることだけを見た答えです。
当院が「抜歯はありえない」と言い切る、明確な理由
一度抜いてしまった健康な歯は、二度と戻りません。そして、抜歯によって「並べただけ」の状態では、その根本にある「骨格の劣成長」といった問題は解決されないまま、生涯を過ごすことにもなりかねません。
上顎骨は単なる「歯の土台」ではありません。顔の中央に位置し、呼吸の通り道(鼻腔)を構成する重要な骨です。これを三次元的に正しく育てることは、単に抜歯を防ぐだけでなく、お子様の顔立ちのバランス、ひいては全身の健康の礎となる「正しい呼吸」をサポートすることを意味します。
「自然に治る」という不確かな望みに賭けて、様子見をし、結果として抜歯を選択せざるを得なくなるのか。それとも、骨格が持つ成長の可能性を最大化し、歯を抜かずに済む「正しい骨格」を積極的に作り上げるのか。
従来の矯正歯科では伝えられない可能性に対し、当院は目を瞑りません。
土台が小さければ、後から生えてくる永久歯は、重なり合うしかありません。この状況で「様子見」を続ければ、骨格が固まってしまった後に、歯を間引く(抜歯する)ことでしか整合性が取れなくなります。
抜歯矯正とは、成長期における「土台づくり」の軽視が生んだ、帳尻合わせともいえる側面があります。
抜歯を避けるランパセラピーの意義
「ランパセラピーについて知っていただくこと」
このことは子どもの矯正治療をお考えの方にとって、大変意味のあることだと思います。これは、実際にランパセラピーによる治療を「する・しない」に関わらずです。
特に、ランパセラピーを初めて耳にされた方には、矯正治療に対する考え方まで変わるかもしれません。だからこそ判断が難しい。その時は、一旦、ここでの知識を持って、他の矯正治療を改めて見てください。
当院は、治療の優劣をお伝えしたいのではありません。お子様の判断の代わりをされる保護者の方に、治療ごとの違いを理解され、どの矯正治療がご家庭に合っているのかをお考えいただきたいのです。
そしてもう一歩踏み込んでほしい大切なこと。矯正治療とは、装置を売るビジネスではありません。装置の使用は「術式」であって、結果を導くのは「術者」と「ご家庭の頑張り」です。
「抜歯を避けるなら、いつ何を見るのか」
「では、何歳になったら抜歯が必要かどうか分かるのでしょうか」
この考え方自体を、一度変えてみてください。永久歯が生え揃ってから、「並ばないから抜く」と判断するのでは遅い場合があります。その時には、すでに骨格の大きな成長機会を使ってしまっているからです。
- 歯が並ぶスペースは十分あるのか。
- 上顎はどの方向へ成長しているのか。
- 鼻呼吸ができているのか。
- 舌は上顎で働けているのか。
- 下顎はどこに位置しているのか。
- これから永久歯が生える骨格的な余地があるのか。
当院では、抜歯するかどうかではなく、これらを見ます。
歯がガタガタになってからが、矯正の始まりではありません。「このまま成長したら、永久歯はどこに生えるのか」を考えることが、小児矯正では大切です。
もちろん、すべてのお子様が抜歯矯正になるわけではありません。
しかし、すでに歯が並ぶスペースが不足している、顎が小さいと言われている、口呼吸がある、歯並びが悪くなる兆候が見えている。
そのような場合に、「永久歯が生え揃うまで待ってから考える」ことと、「まだ成長できる今、骨格を評価する」ことでは、その後に残される選択肢が変わる可能性があります。
抜歯を避けたいのであれば、抜歯が必要と言われてから考えるのではなく、抜歯が必要になる骨格をつくらないことから考える。
これが当院の小児矯正の考え方です。
骨格の成長は待ってはくれない
「矯正治療の目的は "歯並び" で大丈夫でしょうか?」
親御様がご自身の矯正経験から「抜歯は避けたい」と願うのは、正しい直感です。
ランパセラピーは、魔法ではありません。ご家庭の努力や協力が不可欠な治療です。しかし、そこまでしてでも「骨格を根本から再構築する」ことには、将来の抜歯リスクを回避する以上の価値があります。
「様子見」を提案された時、ぜひ一度立ち止まって考えてみてください。その決断の先に、お子様のどんな未来が待っているのか。
もし、今ある「歯並びが悪くなる兆し」を、成長のチャンスとして捉えるのであれば、骨格の現状を把握することから始めてください。抜歯に頼らない未来は、親御様の「放置しない」という決断から始まります。
治療のタイミングは、年齢や症状などによってそれぞれ。でも、ご相談はなるべく早く、つまり「今」がベストです。様子見のうちによくなることに期待するのは、放置するリスクと釣り合いません。
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この記事を書いた人
院長:岡井有子
大阪歯科大学大学院歯学研究科修了:歯学博士
医療法人社団セントワ理事長
所属学会
- 日本小児歯科学会
- 日本小児耳鼻咽喉科学会
- 日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会
- 日本ダウン症学会
所属研究会
- RAMPA研究会
- 歯科保健医療国際協力協議会
- 赤ちゃん歯科ネットワーク
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- CMBBE
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
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