コラム
骨格を育てるバイオブロックとランパセラピーの違い|成長していく子どもたちのための小児矯正
同じ「顎を育てる」でも治療は違う バイオブロック・急速拡大装置・マイオブレース・RAMPA
「小児矯正にはどんな種類があるの?」——バイオブロック、RAMPA(ランパセラピー)もその中で見つけられ、このページにたどり着いたのかもしれません。
ランパセラピーが向き合っているのは、顎の骨格そのもの——中顔面を立体的に牽引し、本来育つはずだった方向へ成長を導く治療です。
それらを「どれも歯を並べるための方法」として、同じ並びで比較してしまうと、本質的な違いを見誤ってしまいます。
検討する上で最も大切なポイントは「どの治療がいいか、悪いか」ではなく、「どの治療が適切なのか」です。
「顎を育てる」と言われる治療は、全部同じではありません
小児矯正を調べていると、バイオブロック、急速拡大装置、マイオブレース、そしてランパセラピー、機序には似たような説明が並びます。
- 「顎を育てる」
- 「歯並びが悪くなる原因を治す」
- 「鼻呼吸を育てる」
「結局どれも、顎を育てて、歯並びを良くして、鼻呼吸まで良くするって言ってるじゃん」——
それらの違いをインターネット上だけで判断するのは簡単ではありません。
しかし、働きかけている場所も、使っている力も、骨格へのアプローチも同じではありません。手段が違えば、目指す場所も違います。
大切なのは「顎を育てる治療かどうか」ではなく、「何に、どの方向から、どんな力を加えているのか」です。
それらの違いを、言葉だけで一括りにしないでください。私たちは、ランパセラピーの専門医院として、正しい骨格の成長に向き合っています。
バイオブロックとは
バイオブロックとは、子どもの成長する力を利用しながら、歯並びだけではなく、顎や顔面の成長そのものを整えていこうとする小児矯正です。
開発したのは、イギリスの歯科医師 John Mew(ジョン・ミュー)。単に歯をきれいに並べることではなく、舌の位置・口唇閉鎖・鼻呼吸・口腔姿勢、そして顔面の成長方向まで含めて考えることを重視しました。
上顎を拡げることで舌が収まる空間をつくり、舌が上顎に位置しやすい環境を整える。口唇を閉じ、鼻で呼吸し、本来あるべき口腔姿勢を取り戻しながら、顔面を望ましい方向へ成長させていく。
ここに、バイオブロックの本来の考え方があります。
つまり、「歯をどこへ動かすか」ではなく、「顎や顔をどのように育てるか」を考える治療です。
そのため、歯列を横へ拡げることを主な目的とする床矯正や急速拡大装置、筋機能や口腔習癖の改善を中心とするマイオブレースとは、同じ「顎を育てる」と表現されていても、実際に行っていることは同じではありません。
そして、当院で行っているRAMPA(ランパセラピー)は、このバイオブロックの「顔面成長を整える」という考え方を源流に持ちながら、中顔面へ上前方の力を直接加える方向へ発展した治療です。
だからこそ、バイオブロックとRAMPAの違いを見るときに大切なのは、装置の形ではありません。
「骨格のどこに、どの方向の力を与えるのか」
そこを見る必要があります。
バイオブロックとRAMPAの違い
決定的な違いは「上前方への力を、どうつくるか」
バイオブロックは、口腔内装置を段階的に使い分けながら治療します。ただし、バイオブロックを単なる「拡げる装置」と考えるのは正確ではありません。上顎を拡大して舌が収まる空間をつくり、口腔姿勢を整えながら、望ましい成長へ導く。顔を前方へ育てようとする考え方そのものは、バイオブロックにもあります。
一方、ランパセラピーでは、口腔内装置に加えて口腔外装置を使用します。
なぜ、そこまでするのか。
大きな理由が、中顔面(上顎)に「上前方」への直接的な外力を加えるためです。単に「前へ出す」ことではありません。
「前へ、そして上へ」
中顔面全体から上前方へ牽引することを目的として設計されています。
つまり、バイオブロックが目指した顔面成長という考え方を、RAMPAでは「上前方への外力」という力学的アプローチへ発展させています。
ここが、両者を比較するときに私たちが最も重要だと考えている違いです。
バイオブロックもRAMPAも、どこでやっても同じではありません
現在、バイオブロックを自社の治療システムに採用しているMRC(※)自身が、バイオブロックについて、術者の技術に大きく依存する治療であると説明しています。
同じ装置を使うのだから、どこでやっても一緒。そう考える親御様も少なくありません。
しかし矯正治療は、装置そのものが診断をしてくれるわけではありません。何を問題と診断し、その骨格をどの方向へ変えようとしているのか。
そこには術者の診断と治療設計が必要です。
そして、バイオブロックとRAMPAにはもう一つ、大きな違いがあります。
RAMPAでは、中顔面に上前方への外力を直接与えることを治療設計の中心に置いています。バイオブロックは口腔内装置のみの治療です。
私たちが見ているのは、「顎が拡がったか」「歯が並ぶスペースができたか」だけではありません。
- 中顔面がどの方向へ成長しているのか。
- 鼻腔や気道を含めた周囲の構造はどうなっているのか。
- 下顎はどの位置にあるのか。
それらまで評価します。頭蓋骨全体の問題として、中顔面の骨格変化が必要ならば、バイオブロックは必ずしも適切ではないかもしれません。
※MRCは、Myofunctional Research Co. の略です。オーストラリアの会社で、Myobraceなどの筋機能・歯列発育系の装置を開発・提供している企業です。MRCは現在、バイオブロックを自社の治療システムの中で取り扱っており、公式サイトにBiobloc Stage 1などの説明を掲載しています。
バイオブロックとRAMPA、同じ「顎の成長」を考える治療で何が違うのか
バイオブロックとRAMPAは、どちらも成長期の子どもに対して行われる矯正治療です。
どちらも単に「歯をきれいに並べる」ことだけを目的とはしていません。そして、どちらにも上顎や顔面の成長を考えるという共通点があります。
大きな違いの一つに、「望ましい成長を、どのような方法で導こうとしているのか」があります。
バイオブロックとは|Orthotropicsという治療体系の一部
バイオブロックは、イギリスの矯正歯科医John Mewが開発した装置です。
John Mewは、不正咬合を単なる歯並びの問題として捉えるのではなく、口腔姿勢と顔面の成長方向との関係を重視しました。これがOrthotropics(オーソトロピクス)の基本的な考え方です。
バイオブロックは1970年代に開発され、1979年には American Journal of Orthodontics に掲載されています[1]。
バイオブロックは、単なる「顎を拡げる装置」ではありません
バイオブロックにはStage 1、Stage 2、Stage 3などがあり、すべてを一つの装置として説明することはできません。
Stage 1では、上顎歯列弓を拡大し、舌が収まるための空間を確保していきます。John Mewは、Stage 1について、歯を単純に外側へ傾斜させることではなく、正中口蓋縫合を拡大することを意図した装置として説明しています。
そしてOrthotropicsでは、その後が重要です。
- 舌を上顎に置く
- 口唇を閉じる
- 歯を近接させる
- 鼻で呼吸する
こうした口腔姿勢を整えることで、顔面がより望ましい方向へ成長できる環境をつくろうとします。
ですので、バイオブロック=拡大床と理解するのは適切ではありません。
そして、John Mewが問題視してきたものの一つが、顔面の垂直的・下方への成長です。Orthotropicsでは、望ましい口腔姿勢を獲得することで、顔面をより前方へ成長させることを目指します。
つまり、「顔を前へ育てたい」という発想そのものは、RAMPAだけのものではありません。バイオブロックにもあります。
ここを無視して、「Bioblocは顎を拡げる治療、RAMPAは拡げながら前に出す治療」と比較してしまうと、バイオブロックを正しく説明したことにはなりません。
では、RAMPAは何が違うのでしょうか
RAMPAとは「Right Angle Maxillary Protraction Appliance」の略です。そして、成長期の中顔面にアプローチする治療です。
ここにバイオブロックとの大きな違いがあります。
RAMPAでは、望ましい口腔姿勢によって自然な成長方向へ誘導することだけに依存するのではなく、上顎を通じて中顔面そのものに「前上方」への外力を加えるという明確な力学的アプローチを持っています。口腔外装置という構造を持たないバイオブロックでは、変化させられる骨格の領域が限定的となるのです。
RAMPAの特徴は「前」だけではなく「前上方」
上顎前方牽引そのものは、RAMPAだけの治療ではありません。従来からフェイスマスクなどを用いた上顎前方牽引は行われています。
しかし力を加える位置や方向によっては、上顎の前方移動とともに回転や垂直方向への変化が生じます。
RAMPAが設計上、重視しているのは、「前方+上方」というベクトルです。
2018年の有限要素解析では、RAMPAによる上顎の前上方牽引が検討されました[2]。2021年に The Angle Orthodontist に掲載された有限要素解析でも、RAMPAと口腔内装置を組み合わせた際に、上顎前方部で前上方への変位が示されています[3]。
つまり、「RAMPAは前上方への力を狙って設計されている」という説明は、単なる治療哲学ではありません。少なくとも力学モデル上、その方向への変位が研究されています。
なお、これらの研究には当院院長が共著者として参加しています。利益相反として明記しておきます。
つまり、BioblocとRAMPAは「目的が異なる治療」ではありません。むしろ、問題意識には重なる部分があります。
違うのは、その目的に対して、何を主要な駆動力として使うのかです。
「姿勢を変えて成長を待つ」のか、「骨格に力を加える」のか
Orthotropicsでは、口腔姿勢を改善することで、顔面が本来の成長方向へ進む環境をつくるという考え方が非常に重要です。これは、成長が十分に残っている子どもでは合理的な考え方です。
しかし、すでに骨格の劣成長が進んでいる子どもではどうでしょうか。
上顎が狭い。中顔面が十分に前方へ育っていない。鼻腔が狭い。舌が上顎に収まらない。口唇を閉じにくい。
そのような状態になってから、「正しい舌位を獲得しましょう」だけで、すでに生じた骨格の劣成長をどこまで変えられるのでしょうか。
ここに、RAMPAを考える理由があります。
RAMPAは「働けない舌」に責任を問う前に、働ける骨格環境をつくる
舌の位置は重要です。口唇閉鎖も重要です。鼻呼吸も重要です。
しかし私たちは、なぜ、その子は舌を上顎につけられないのか?を先に考えます。
上顎そのものが狭く、舌が収まる空間が不足しているのであれば、舌を上げる練習だけでは解決できない可能性があります。鼻呼吸がしづらい構造になっているのであれば、「口を閉じましょう」と教えるだけでは難しいことがあります。
つまり、機能が骨格をつくった可能性がある一方で、すでに形成された骨格が、その後の機能を強いている可能性もある。ここを一方向だけで考えないことが重要です。
当院がRAMPAを選択する理由は、すでに生じている骨格の問題に対して、骨格そのものへ働きかける選択肢を持ちたいからです。
なぜRAMPAは「骨格」を重視するのでしょうか
私たちは「歯が並ぶスペースができたか」だけを治療のゴールにはしていません。
上顎は歯を支えるだけの骨ではありません。中顔面を構成し、鼻腔や副鼻腔など周囲の構造とも解剖学的に密接な関係があります。また、顔面の垂直的成長と下顎の回転は、顔貌や咬合にも関係します。
だからこそ、顎が拡がったかだけでも、前に出たかだけでもなく、上顎骨・下顎骨を中心に、骨格がどう変化しているのかを診る必要があります。RAMPAでは、そのために前上方へのベクトルを設計しています。
RAMPAで実際に骨格は変わるのでしょうか
ここは、理論と研究結果を分けてお伝えします。
RAMPAについては、有限要素解析だけではなく臨床研究もあります。2022年には、有限要素解析と臨床データを組み合わせた研究が報告されています[4]。
さらに2026年には、RAMPA治療を受けた小児をCoben分析で評価した臨床研究が Journal of Clinical Medicine に掲載されました[5]。この研究では、治療群で前上方への頭蓋顔面成長と下顎の反時計回り方向の変化が報告されています。
これらの研究についても、当院院長が共著者として参加しています。
ただし、注意点があります。この2026年研究は大規模なランダム化比較試験ではありません。
鼻腔や気道についてはどうでしょうか
RAMPAについては、気道・鼻腔についても研究されています。
2018年の研究では、治療前後の気道容積や舌骨位置の変化が報告されています。ただし、この研究は小規模であり、これだけでRAMPAによる呼吸改善を一般化まではできません。
さらに近年は、鼻腔・副鼻腔容積や鼻腔通気についての研究も報告されています[6]。これらの研究にも、当院院長が参加しています。
とはいえ、「鼻腔容積が増えた」ことと「すべての子どもの口呼吸の原因が解消される」ことは同じではありません。
鼻閉には、アレルギー性鼻炎、アデノイド、口蓋扁桃、鼻中隔、鼻粘膜の状態などの原因があります。RAMPAは、耳鼻咽喉科疾患自体を治療するものではありませんが、改善される症状は少なくありません。
だから当院では、必要に応じて他科での評価も重要だと考えています。
では、バイオブロックでは骨格を変えられないのでしょうか
ここは誤解してほしくないところです。
バイオブロックはもともと、顔面成長を変えることを目指して開発された治療体系です。John Mewは1979年から報告しており、その後も顔面成長の変化を主張してきました[1]。
バイオブロック治療後の気道や軟組織、頭蓋顔面形態について検討した研究も存在します。
しかし、バイオブロックについては長い臨床歴がある一方で、現代のEBMで高い確実性を与える大規模RCTや独立した高品質研究が豊富に揃っているとは言えません。
したがって、バイオブロックでは骨格は変わらないとも、バイオブロックなら顔面成長を確実に正常化できるとも言い切れません。
そしてこれは、RAMPAについても同じです。当院が関与した研究は複数ありますが、大規模RCTによる検証は、今後の課題です。
バイオブロックとRAMPA、どちらが優れているのでしょうか
バイオブロックが提起した、歯並びだけではなく、顔面の成長そのものを診るという考え方は非常に重要です。
John Mewが問題提起してきた、顔面の成長方向、舌の位置、口唇閉鎖、口腔姿勢、鼻呼吸という視点は、RAMPAとも重なります。
それでも、当院がRAMPAを選択する理由があります。
それは、すでに骨格の劣成長が始まっている子どもに対して、「正しい機能を獲得すれば、これから正しく成長する」ということに期待するのではなく、すでに形成された骨格そのものへ前上方という力で働きかけたいからです。
「原因」と「結果」を逆にしないために
舌が下がっている。口が開いている。口呼吸をしている。歯がガタガタしている。
これらを見たとき、「舌が弱いから」「口を閉じる筋肉が弱いから」「悪い癖だから」と考えることは簡単です。
しかし本当にそうでしょうか。
舌が下がったから骨格が悪くなったのか。それとも、骨格が十分に育たなかったから、舌がそこにいられなくなったのか。臨床では、この二つを単純に切り離すことはできません。機能と構造は相互に影響します。
だからこそ必要なのは「舌が下がっているから舌を鍛える」と、結果だけを見るのではなく、なぜ、この子の舌はそこにあるのか?まで評価することです。
バイオブロックとRAMPAの違いから、私たちが伝えたいこと
バイオブロックとRAMPAは、どちらも単なる歯列矯正という枠だけでは説明できない治療です。
そして両者には、「成長期の子どもだからこそ、歯だけではなく顔面全体を診る」という共通した問題意識があります。
しかし、その方法は同じではありません。
Biobloc / Orthotropicsでは、上顎を拡大して舌のための空間をつくり、口腔姿勢を改善することで、望ましい顔面成長を導くことが重要な柱になります。
RAMPAでは、上顎そのものに前上方への外力を与え、すでに生じている骨格の劣成長へ直接働きかけることを重視します。
私たちがRAMPAを選ぶのは、バイオブロックの考え方を否定するためではありません。むしろ、「歯だけを見るのではなく、なぜその歯並びになったのか」という疑問を、さらに骨格そのものへの治療へ繋げたいからです。
歯が並ばない。口が閉じられない。舌が下がっている。鼻で呼吸できない。
その一つひとつを見るのではなく、なぜ、その状態になっているのか。RAMPAは、そこから治療を始めます。
RAMPAは、バイオブロックから派生し、独自に進化をしている治療です。子どもたちの呼吸、骨格のためにはその進化が必要だったから——だからバイオブロックから飛び出したのです。
参考文献:
[1] Mew JR. Bioblock therapy. American Journal of Orthodontics. 1979;76(1):29–50.
[2] Mitani Y, Choi B, Choi J. Anterosuperior protraction of maxillae using the extraoral device, RAMPA; finite element method. Comput Methods Biomech Biomed Engin.2018;21:722–729.
[3] Moshfeghi M, Mitani Y, Choi B, Emamy P. Finite element simulations of the effects of an extraoral device, RAMPA, on anterosuperior protraction of the maxilla. Angle Orthod.2021;91(6):804–814.
[4] Mitani Y, et al. Finite element and clinical analyses of effects of a new intraoral device combined with RAMPA. 2022.
[5] Mitani Y, Okai-Kojima Y, Shimazaki T, Moshfeghi M, Motoyoshi M. RAMPA Therapy: Effects on Craniofacial Growth Assessed by Coben Analysis and Statistical Evaluation. J Clin Med.2026;15(5):1882.
[6] Moshfeghi M, Mitani Y, Okai-Kojima Y, Choi B. Impact of RAMPA Therapy on Nasal Cavity Expansion and Paranasal Drainage. Biomimetics.2026;11(1):5.
※CT画像です。ランパセラピーが順調な経過を辿ると、中顔面全体(青丸)が上前方へ成長します。経過が不十分ですと口元周りの限られた変化(赤矢印)になります。
そして、中顔面の上前方への成長変化により、下顎が前方回転(3連の青矢印)するように上がってきます。上顎が上がらないと、下顎は上がってきません。下顎が上がることで、気道の圧迫が解放されます。
バイオブロックとRAMPA、どちらを選ぶべきか
バイオブロックの思想を受け継ぎながら、すでに骨格に問題が生じている子どもに、どの方向から、どのような力を与えるのか。
そこをさらに追求した仕組みがRAMPAです。
だから、治療法を選ぶ前に確認してほしいことがあります。
- 中顔面がどの方向へ成長しているのか。
- 鼻腔や気道を含めた周囲の構造はどうなっているのか。
- 下顎はどの位置にあるのか。
そして、それらに対して——
- 「なぜ、この治療なのか」
- 「骨格を、どの方向へ変えようとしているのか」
装置を選んでから診断するのではありません。診断があって初めて、どの治療が必要なのかが決まります。
私たちは歯並びを整えることをゴールにはしません。骨格を、どの方向へ育てるべきかを診ます。そのために当院が選択している治療が、RAMPAです。
では急速拡大装置との違いとは
急速拡大装置とは、上顎の中央にある正中口蓋縫合を左右に拡げ、上顎の横幅を広げる治療です。
成長期の子どもでは骨のつなぎ目がまだ柔軟なため、装置に付いたネジを拡げながら、上顎を横方向へ骨格的に拡大していきます。歯が並ぶスペースの確保だけでなく、鼻腔の幅が広がることで鼻呼吸への好影響が期待されることもあります。
ただし、RAMPAのように中顔面全体を上前方へ成長させることを目的とした治療ではありません。
同じ「顎を育てる」「鼻呼吸に関わる」と説明されることがあっても、
- 急速拡大装置=上顎を横へ拡げる治療
- RAMPA=中顔面を上前方へ導く治療
という力の方向と目的の違いがあります。
※名称は似ていますが、顎顔面矯正(急速拡大装置)は、顎顔面口腔育成療法(ランパセラピー)とは異なる治療です。手段も経過も目的も異なります。ご検討の際には必ず治療の理解をされてください。悪質さを感じましたのでお伝えいたしますが、当院の患者様で「顎顔面矯正はランパとほとんど同じ」とどこかのクリニックで説明を受けた方がいらっしゃいます。どちらの治療に対しても、何より患者様に対して大変失礼な話です。
マイオブレース
マイオブレースとは、マウスピース型の装置とトレーニングを組み合わせ、口呼吸・舌の位置・嚥下・口唇などの口腔機能や習癖を整えていく小児矯正です。
歯をワイヤーで直接動かすことを中心とするのではなく、歯並びを悪くする原因と考えられる口腔機能を改善し、本来の顎の発育や歯の萌出を促すという考え方です。
そのため、治療では装置を使用するだけでなく、鼻呼吸、舌、飲み込み方、口唇などのトレーニングも重要になります。
ただし、これは筋機能や口腔習癖を整えることを中心としたアプローチです。RAMPAのように、口腔外から中顔面へ上前方の外力を直接加える治療とは、骨格への働きかけ方が異なります。
バイオブロック・急速拡大装置・マイオブレースに口腔外装置はありません
| ① | バイオブロック | RAMPA |
|---|---|---|
| 主に働きかけるもの | 上顎・口腔姿勢・顔面成長 | 上顎を含む中顔面 |
| 考え方・力 | 口腔内装置・口腔姿勢 | 口腔内外の装置による三次元的外力 |
| 特徴 | 上顎を拡げ、舌の空間をつくる | 中顔面へ上前方の力を直接加える |
| ② | 急速拡大装置 | マイオブレース |
|---|---|---|
| 主に働きかけるもの | 上顎の横幅 | 舌・唇などの口腔機能 |
| 考え方・力 | 正中口蓋縫合を左右へ拡大 | 筋機能・習癖の改善 |
| 特徴 | 横方向の骨格拡大 | 機能を整え、本来の発育環境をつくる |
あれも治る、これも治る、といえる段階ではありません
呼吸の改善によって、アトピーやアレルギーの改善まで掲げられていることがあります。副次的な効果としては当院でも確認していますが、関連が検討されている領域であり、矯正装置によって改善すると明言できる段階ではありません。
治療目的として掲げるべきものではないと考えています。
歯列か、骨格か、その他の矯正治療
RAMPAの役割の中心は歯列ではなく、歯がきちんと生えてこられるように「土台を整える」ということです。ポイントは——
- 原因(骨格の発達の問題)にアプローチをするのか?
- いま目に見えている症状(歯並びの悪さ)にアプローチをするのか?
となります。
RAMPAの主目的は骨格の成長不良によって導かれた諸症状の改善。この諸症状の中に「歯並びが悪い」も含まれるとの話なんですね。審美を主目的とされるならば、RAMPAは必ずしもご希望を叶えられる治療ではないかもしれません。
当院として、お子様たちの未来を考えたとき、原因が骨格にあるとの推測がありながら、歯列を整えるために行う矯正治療のご提案ができないことは何卒ご理解ください。
歯並びが悪くなる原因の裏側には「呼吸」の問題が潜んでいる可能性があります。無論、RAMPAを押し付けるようなこともいたしません。ぜひお考えになられてみてください。
ワイヤー矯正
いわゆる一般的な矯正治療です。見た目に抵抗がある方に向けて、目立たないタイプや歯の裏側に装着できるタイプもあります。多様な不正咬合に対応が可能ですが、基本的に装置の取り外しはできません。ワイヤーの力で歯を少しずつ移動させていきます。この歯を移動させる時に、矯正治療独特の痛みが生じます。
お子様の一期矯正の次の段階、二期矯正は主にこのタイプです。ワイヤーを付ける位置によって裏側矯正・舌側矯正などの呼び方となります。
マウスピース矯正
近年、マウスピース型の矯正治療が増えてきたことで、勘違いをされる方が多いのですが、実は最新の発想の治療ではありません。
痛みが少ないことや比較的安価とされることなどから、ご負担が軽くなり、矯正治療に対するハードルは低くなります。一方で矯正治療に対するハードルが低くなったのは、歯科医師に関しても同様です。
しかしその構造上、不得手とする症例もあります。お手軽さのイメージからか、マウスピース矯正をご希望される方は多いですが、すべての方にマウスピース矯正が適切なわけではないことは改めてご留意ください。
以下は日本矯正歯科学会によるマウスピース型矯正に関する見解から引用しています。当院はランパセラピーの専門医院ですが、マウスピース型矯正については同様の見解を持っています。
インターネット上で、歯科医師が介在しない形でマウスピース型製品が販売され、歯列の改善への有効性を謳うケースが出てきています。矯正歯科治療は、正確な診断や精密な治療計画に立脚して行われるべき医療行為であり、誤ったマウスピース型製品の使用は予期せぬ大きな問題を引き起こす可能性があります。患者自身の独自の判断でこれらの製品を使用し歯の移動を行うことは、歯科医学的にも非常に危険であるため絶対に避けてください。
マウスピース型矯正装置による治療には、以下の利点・欠点を踏まえた適応症の判断や専門的知識を要することから、大学病院等や学会が認める基本研修機関において十分な矯正歯科領域全般にわたる基本的な教育と臨床的なトレーニングを受けた歯科医師による診察、検査、診断を基に治療を行うことを推奨します。
- 欠点
・歯の移動量の少ない症例に限られる(軽度の乱杭歯、軽度の歯の空隙、矯正治療後の軽度の後戻り等)。
・毎日長時間の装着を必要とし、使用状況によって効果が大きく異なる。
・小児や骨格性要因を含む症例には適さない。
・現在の医療水準で考えれば精密な歯の移動は原則として困難で、満足のいく治療結果が得られない可能性がある。- 利点
・他人から見えにくい装置である。
・装置の着脱が簡単で食事や歯磨きがし易い。
・金属アレルギーを有する方も使用できる。
・診療室での治療時間が比較的短い。
矯正治療とは「医療」であることをお忘れにならないでください。うまくいけば「ラッキー」ではありません。
床矯正(拡大床)
拡大床といわれる装置を使用して行います。小児の一期矯正で使用されることが多いです。「永久歯が生えるスペースが足りない」と予想されるときに使われます。
床矯正で拡げるのは「顎」ではなく、基本的に「歯列」です。これは必ずご記憶ください。「顎が小さい」からと「顎を拡げる」治療ではありません。
※床矯正とは広い括りで、実際には拡大床以外の装置を使用する床矯正もあります。ですが、それらは括りこそ「床矯正」かもしれませんが、それぞれ固有の名称で表されます。サイト内での床矯正は、一般的な「拡大床」としてお話しいたします。
MFT(口腔筋機能療法)
「矯正治療」より、お口のトレーニングといった理解の方が分かりやすいです。舌や咀嚼筋などのお口を取り巻く筋肉の機能を改善し、正しいお口の環境に整えようとの考え方に基づきます。
予防的な側面が強くなること、お子様自身のトレーニングの必要性があることはご留意ください。(装置を使用しない)機能的矯正や予防的矯正といわれることもあります。
※機能的矯正:装置による機械的な力ではなく、噛む力などを装置を介して、矯正力に変える矯正治療
0期矯正は矯正治療ではありません
最近、「0期矯正」という言葉を見聞きします。一期矯正以前の、予防的意義を持っての取り組みのようです。意義としては大変よい取り組みです。ただ、注意していただきたいことがあります。
当院では、「赤ちゃん歯科」を実践していますので、多くの赤ちゃんと親御様を拝見します。話を伺うと、伝える側がただの情報商材として扱っている心配があります。単なる知識としてしか伝わっておらず、それが理解に及ばないと、正しい実践はできません。
「予防とは最上位概念にある治療」です。皆様にとって一番よいのは確実に「予防」です。正しい予防の価値を、今一度考えられてみてください。
「予防」、もしくは「骨格以前の問題」に対処するのが赤ちゃん歯科。正しくない成長をしてしまった骨格を「取り戻す」のがランパセラピー。目的は同じ。「正しい骨格の成長」です。
ですが、どちらか一方で十分かといえば、そうではありません。これは理屈ではなくて、現実的な問題です。
赤ちゃん歯科でのお伝えを、日常生活において、すべて実践し結果を出せるかというと正直大変です。毎日の仕事、家事、育児‥そこまで精神的・時間的コストを割くのは本当に難しい。
ではランパセラピーに懸けるか?これはこれで大変です。頑張るったって限界があります。なにより「どこまで取り戻せるか?そのためにどれだけの時間とコストが必要か?」は不可避な問題です。
ではどうすれば?優先順位は赤ちゃん歯科です。完璧じゃなくてもいいです。ちょっと頑張ってみてください。
ほとんどの歯科では話さえ出ないような「姿勢の悪さ・口呼吸」の本当のリスクを当サイトではお伝えしています。知ってさえいれば、行動は変わります。少なからず、数年先のお子様の未来は変えられるはずです。矯正治療が必要ないお子様は現実的にいます。
仮に矯正治療が必要になったとしても、その負担は間違いなく軽くなっているはずです。何より「取り戻せるもの」の最大値が違う。ランパセラピーが必要なく、歯列矯正で済むならば、「なおよし」ですね。
あまり大きな声で言えませんが「赤ちゃん歯科ネットワーク」には、当院を含めRAMPAの先生数名、三谷先生も参画しています。それくらい「赤ちゃん歯科」と「ランパセラピー」は密接なんです。ですが、私自身の子ども、そして三谷先生はお孫さん。やっぱり、何から何まで頑張るのは難しかったと笑い合います。でもです。やっぱりその後の負担は少なくて済んだ。
それが現実的な話だと思います。問題は、後回しにすればするほど厄介になり、不測の事態も起こります。
赤ちゃん歯科を、「最近流行りの0期矯正だな‥」と思われないでください。
「赤ちゃん歯科」とは、石田房枝先生が50年かけて積み上げた歴史です。その歩みを知る者が「0期矯正」なんて言葉は使いませんので頭の片隅に置かれてください。
ことは、赤ちゃんという「人の幸せ」、「社会の未来」に関わること。その責任の重さを考えてほしい。
それらが情報商材の転売であってはなりません。当院にも、そのようなセミナー案内が間を空けずに来ます。矯正治療に関しても同様ですが、正直その無責任さに怖さを感じます。「0期矯正」とは、マーケティング的に作られた言葉で、「歯科」の言葉ではありません。
ランパセラピー専門医院
当院は、矯正治療においてはランパセラピーの専門医院です。
他の矯正治療法については、ご紹介程度にとどめ、それらのメリット・デメリット等の詳細はお伝えを控えます。顎顔面口腔育成療法以外の矯正治療で気になる治療がございましたら、取り扱いのあるクリニックに直接お問い合わせください。
当院が扱っていない治療について、無責任なお伝えはできませんので、何卒ご理解ください。
諸々のサイトで見かけられるメリット・デメリットとは、広く一般的なものである場合がほとんどです。もちろんそれらのご理解も大切ですが、患者様それぞれに事情は異なります。実際には歯科医師の考え方によるところも小さくありません。
術式も大事ですが、術者はそれ以上に大事な部分です。
矯正治療についてお悩みの方が、本当に知りたいメリット・デメリットとは、ここにあるのではないかと思います。
「RAMPAによって顎の骨格は健全的に改善できる」ならば、機械的に無理に拡げることも抜歯をすることも必要のない過程です。ご判断の前に、これらはやり直しの効かないことであることを、今一度立ち止まってみてから治療へお進みください。
■ European Conference on Dentistry and Oral Health(パリ)
- クラスIの前方部叢生と喘息および慢性副鼻腔炎を有する患者に対するRAMPA療法の症例研究:CT画像評価
- RAMPA療法によるアントレー・ビクスラー症候群およびダウン症候群患者の上気道容積の増加
■ MENA Congress for Rare Diseases(アブダビ)
- RAMPA療法を用いたダウン症候群患者の治療:頭蓋顎顔面成長誘導法
- RAMPA療法を用いたアーノルド・キアリ奇形患者の治療:頭蓋顎顔面成長誘導法
■ 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
- RAMPA療法を受けたダウン症候群児の呼吸症状の改善
■ DownSyndrome(ダラス)
- RAMPA療法を用いたダウン症候群患者の非外科的治療:頭蓋顎顔面成長誘導法
- RAMPA療法による希少疾患患者の呼吸器症状の改善
■ CMBBE(バルセロナ)
- RAMPA療法を用いたアーノルド・キアリ奇形患者の非外科的治療:頭蓋顎顔面成長誘導法
- RAMPA療法によるアントレー・ビクスラー症候群の小児の呼吸器症状の改善
■ 日本鼻科学会
- 非外科的RAMPA療法による患者の気道容積増加に関する統計分析
- RAMPA療法による鼻閉患者の気道容積増加に関する統計分析
RAMPA療法:コーベン分析と統計的評価による頭蓋顔面成長への影響
Yasushi Mitani, Yuko Okai-Kojima, Takahisa Shimazaki, Mohammad Moshfeghi, Morio Tonogi, Shouhei Ogisawa, Bumkyoo Choi and Mitsuru Motoyoshi:J. Clin. Med. 2026, 15(5), 1882
RAMPA療法が鼻腔および副鼻腔の体積評価に及ぼす影響:副鼻腔の透過性が良好な患者と混濁した患者における比較統計分析
Yasushi Mitani, Yuko Okai-Kojima, Mohammad Moshfeghi, Morio Tonogi, Shouhei Ogisawa, and Bumkyoo Choi:Oral 2026, 6(1), 8
RAMPA療法が鼻腔拡張と副鼻腔排液に及ぼす影響:流体力学解析、CAEシミュレーション、および症例研究
Mohammad Moshfeghi, Yasushi Mitani, Yuko Okai-Kojima and Bumkyoo Choi:Biomimetics 2026, 11, 5
RAMPA療法:上顎骨の前上方牽引における縫合剛性の影響:有限要素解析(FEA)による検討
Mohammad Moshfeghi, Yasushi Mitani, Yuko Okai-Kojima, Bumkyoo Choi and Peiman Emamy:Oral 2025, 5, 74
症例報告:RAMPAと新規ハイブリッド口腔内装置を併用した顎口蓋複合体の整形外科的治療
Yasushi Mitani, Mohammad Moshfeghi, Noriyuki Kumamoto, Takahisa Shimazaki, Yuko Okai-Kojima, Morio Tonogi, Shouhei Ogisawa, Bumkyoo Choi
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この記事を書いた人
院長:岡井有子
大阪歯科大学大学院歯学研究科修了:歯学博士
医療法人社団セントワ理事長
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