コラム
ランパセラピーで横顔が変わる理由|中顔面の上前方牽引によって取り戻す子ども本来の顔立ち
Eラインとはそんなに従うべき基準ですか 横顔の指標「Eライン」|顎と鼻の基準点は正しいのか
「お子様の口元が出ている」「Eラインから唇が出ている」——そう言われて、気にされたことはありませんか。
Eラインとは、鼻の先端と顎の先端を結んだ線のこと。そこに唇が収まっているかどうかで、横顔のバランスを見る指標です。
ただ、この線を引くとき、前提にされていることがあります。鼻の先端と顎の先端が、正しい位置にあるということです。
もし上顎が下がっていたら——下顎がそれに合わせて後ろへ回転していたら——線を引く起点そのものが、本来の位置にありません。
そこで「口元が出ているから引っ込めましょう」と判断すれば、下がった骨格に合わせて、さらに上顎を後ろへ下げることになります。
私たちの考えは逆です。上顎が上がれば、下顎は上がります。
ランパセラピーで顔立ちが変わるのは、美容のための操作ではありません。中顔面が本来育つはずだった方向——上前方へ向かった結果です。そしてそのとき、Eラインの基準点そのものが動きます。
Eラインとは
横顔の美しさを測る指標の一つに、「Eライン」があります。鼻の先端と顎の先端を結んだ線に対して、唇がどの位置にあるかを見る基準です。
ただ、これは一つの目安であり、絶対的な正解ではありません。多くの人の横顔を平均化した結果として導かれた、統計的な指標に過ぎないのです。
赤ちゃん・子どもにEラインって大切ですか?
Eラインだけで横顔を判断してよいでしょうか|横顔を見る「基準線」は一つではありません
横顔を評価する方法は、Eラインだけではありません。矯正歯科では、口唇・鼻・顎の位置関係を見るために、いくつもの基準線が考案されてきました。
Eラインは、鼻の先端と顎先を結んだ線です。この線に対して上下の唇がどこに位置するのかを見ます。重要なのは、Eラインそのものが固定された線ではないということです。
- 鼻が成長すれば鼻先は動きます。
- 下顎が成長すれば顎先も動きます。
つまり、唇がまったく同じ位置にあったとしても、鼻や顎の成長によって「Eラインに対する唇の位置」は変化します。実際、軟組織の側貌やEラインに対する口唇位置は成長によって変化することが報告されています。
では、鼻先を基準にしなければよいのでしょうか。
そこで使われる別の評価法があります。
- Sライン(Steiner line)は、鼻柱から上唇へ移行するS字状の部分と軟組織の顎先を結んだ線です。鼻尖そのものではなく鼻の基部側を基準にします。
- Bライン(Burstone line)は、鼻の付け根にあたるsubnasaleと軟組織の顎先を結びます。
- Hライン(Holdaway line)はさらに考え方が異なり、上唇と軟組織の顎先を結び、下唇や顔面全体との調和を評価します。
と、いろいろあります。つまり——
- Eライン=鼻先・顎先を基準に口元を見る
- Sライン=鼻基部側・顎先を基準に口元を見る
- Bライン=鼻下点・顎先を基準に口元を見る
- Hライン=上唇・顎先を基準に顔貌の調和を見る
というように、同じ横顔でも「どこを基準にするか」が違います。
では、どの線が正しいのでしょうか。実は、そこが大切なところです。
「どのラインが正しいか」ではなく「基準点そのものは正しい位置にあるか」、これらのラインには共通点があります。
すべて、顔のどこかを基準点にして、別の部位を評価しているということです。ところが、その基準となる鼻、上顎、下顎、顎先そのものが成長途中にあり、さらに骨格的な劣成長があるとしたらどうでしょうか。
「基準」として使っている点自体が、本来あるべき位置にない可能性があります。
これは単なる理屈ではありません。
12歳前後を含む矯正患者を対象に、Eライン、Sライン、Bライン、Hラインなど5種類の基準線を比較した研究では、これらの線から判定された下唇の変化と、実際の下唇の水平的な移動との相関は弱かったことが報告されています。研究では、実際には下唇が前方へ移動していたにもかかわらず、各基準線では「後方へ移動した」ように評価されるケースさえありました。
つまり、「Eラインより唇が何mm前だから、口元を引っ込めればよい」という一つの数字だけでは、その子の横顔全体を説明できません。
なぜなら、唇だけでなく、基準となる骨格も成長し、位置を変えているからです。
子どもの横顔では「完成した顔」の物差しをそのまま当てはめないでください
子どもの顔は、完成した大人の顔ではありません。
頭蓋底、上顎、下顎は成長期を通して変化し、正常咬合でバランスの取れた子どもでも、成長に伴って顔貌は変化します。レビューでも、上顎・下顎は小児期から青年期を通じて成長し、年齢や性別によって成長時期も異なることがまとめられています。
だから当院では、「今のEラインに合っているか」ではなく、「この子の中顔面・上顎・下顎が、どこへ向かって成長しているのか」を診ます。
RAMPAによって中顔面を上前方へ成長変化させれば、上顎だけではなく、下顎の位置、鼻と顎先の位置関係、結果としてEラインそのものも変わっていきます。
口元を基準線に合わせるのか。それとも、骨格を健全な成長方向へ導いた結果として横顔が変わるのか。
見た目は似たゴールに見えても、治療としては違うのです。
もし骨格そのものが劣成長なら、その基準はどう考えるべきでしょうか
Eラインという指標は、集団の平均的なバランスから導かれています。
もし、骨格そのものが、本来の成長から劣成長している場合、Eラインの問題を「口元の問題」と捉え、その平均的な指標に近づけることは、本当に正しいゴールといえるでしょうか。
ランパセラピーは美容に類する治療ではありません。ですが、Eラインが基準とする鼻先と顎先の基準点そのものが変わります。
平均値と、本来の設計図(DNA)は同じではありません
「平均的な人と同じ状態」であることと、「その人が本来持っている設計図(DNA)通りに育っている状態」であることは、必ずしも一致しません。
歯並びの乱れた人がこれほど多い社会では、平均そのものが、すでに本来の設計図から外れている可能性があります。私たちが目指したいのは、平均に合わせることではなく、その子の本来の成長です。
「上顎が上がれば、下顎は上がります」
一般的な矯正では、Eラインを整えるために「歯を抜いて口元を下げる」という手段をとることがあります。その判断がどこまでのリスクを考慮しているのかは分かりませんが、もし子どもへの判断ならば、当院では「ない」です。
ご自身で判断ができる大人ならばともかく、お子様への判断は親御様が代わりにしなくてはなりません。過度な美容への意識が低年齢化していることはリスクでもあります。
Eラインの基準点がそこで正しいと誰が判断するのでしょうか?下顎が下がっているから、Eラインに合わせて、上顎を引っ込める。生体の正しい在り方とは真逆の処置です。
まずは、骨格を正しく健全に成長させてあげること。健全な呼吸機能を得られてから、審美のことは考えてあげてください。
ランパセラピー:Eラインの基準点が変わる
ランパセラピーを始めると、横顔や顔立ちにも変化が現れます。それを聞いて、不安になる方も少なくありません。「望んでいない方向に変わってしまったら」と。
でも、その変化は、誰かの操作で作られた顔ではありません。中顔面という骨格が、本来育つはずだった方向——上前方へ向かった成長が取り戻した結果です。
元々お子様が持っていた骨格に、イレギュラーな力が働き、間違った方向へ成長は進み歪んでしまった。そして、RAMPAの力のベクトルにより、本来そう成長するはずであろう正直な顔立ちへ戻っていくということです。
ですがランパセラピーの目的は、顔立ちを変えることではありません。健全な呼吸を取り戻すことです。そしてお子様のお顔立ちの変化は、その結果として現れるものです。
ランパセラピーとは?
ランパセラピーの目的は、矯正治療を介して、発達に問題のある骨格を、本来の健全な形に整えるということです。これは、元々お子様がご両親からもらった骨格に正直な顔貌へと変化していくということになります。ネガティブな変化との考え方は置いてください。
顔立ちの変化は結果です。操作するものでも、できるものでもありません。ランパセラピーは、美容整形ではありません。子どもたちが本来持っている顔立ちは、それだけで健康的で自然ないいお顔立ちです。健康・健全から滲み出る自信、表情、それらが何よりの「審美」ではないでしょうか?
RAMPAの装置がかけるベクトル
黄矢印が問題のある成長、赤矢印が健全な成長です。つまり、RAMPAによって、お顔が伸びる方向であった成長が、立体的になる方向へと変化するということになります。
「舌」>「下方成長」
中顔面を上前方へ成長させられる舌の力が、発揮できている状態が「鼻呼吸」。生体(骨格)としてのバランスも保たれやすくなります。
「舌」<「下方成長」
中顔面を上前方へ成長させられる舌の力が、発揮できていない状態が「口呼吸」。支えを失った中顔面は、重力の影響によって落ちてきます。
上顎が下がると下顎も下がる
上顎が下がると下顎も連動して下がります。「顔が長くなる」のは、その表出ですが、まだあります。「太っていないのに二重顎」として表出するお子様もいます。
「RAMPA」>「下方成長」
中顔面の下方成長に対抗し、劣成長にある骨格の成長方向を変化させます。人工的に発生させる力の「ベクトルの向き」が重要です。
「RAMPA」による成長変化
ランパセラピーが順調な経過を辿ると、中顔面全体(青丸)が上前方へ成長します。装着時間が足りず、経過が不十分ですと口元周りの限られた変化(赤矢印)になります。
この変化の違いは注意されてください。口元周りの変化では不十分どころか、口だけ前に出てしまったようになります。RAMPAの力が活かしきれていません。装着時間をくどいほどお伝えするのはこのためです。正しいRAMPAでは、おでこと鼻の頭を繋ぐラインの一番低い点から前に出てきます。
そして、中顔面の上前方への成長変化により、下顎が前方回転(3連の青矢印)するように上がってきます。鼻の位置と顎の位置、Eラインの基準点が変わる——その現実です。
ランパセラピー:外見の変化
以下の写真はご家庭のご理解をいただいて、掲載しています。
お子様は、2017.11.25時点で10歳の男の子です。半年足らずで、随分とお顔立ちが変わられました。矯正相談に来られた親御様からは「痩せたからじゃなくて??」とのご質問もいただきます。
正面からの写真では、お顔立ちはスッキリとされました。
CT画像からは、鼻の下から前歯までの距離に注目してください。上顎が上方(実際は上前方)に成長変化しているのが分かります。
ここがランパセラピーと他の矯正治療との違いの「核心」になります。同様に側方(横方向)にも拡大変化していますが、お分かりになりますでしょうか?
ご注意
矯正治療開始前の2017年11月25日と治療開始の約半年後2018年6月4日の写真になりますが、治療前後の比較写真ではありません。治療の経過と変化の一例のご紹介です。2018年6月4日以降も、RAMPAによる治療は継続しています。
では、下の写真をご覧ください。横や斜めからのアングルですといかがでしょう?痩せたからではないことはお分かりいただけると思います。
顎骨の今と昔
矯正相談にお越しになられた親御様に、「ある研究によると、縄文人には不正咬合ってそんなになかったそうですよ。それが現代人においては結構な人に何かしらの不正咬合がみられるそうです。」とお話をしたことがあります。
「…ということは、ランパセラピーでは縄文人のような顔に近づけるということですか??」とご質問が返ってきました。
「なるほど…」
ことお口のことに関しては「進化」ではないかもしれませんが、人類の遠い祖先から比べると、顎骨は小さく、そして狭くなってきました。それが歯の大きさとの間にアンバランスを生じさせています。
それ以上に、現代社会における生活習慣が、顎骨の発達不良の多くを引き起こしています。食生活の変化による咀嚼回数の減少だけに原因を求めるほど単純なものでもないのです。
ランパセラピーは、小さい顎を大きくする治療ではありません。様々な要因で起きてしまった骨格的な発達の問題に対し、矯正治療を通して、健全な骨格へと成長を促していく治療になります。
決して美容のための治療ではありませんが、お顔立ちが変わったことに喜ばれるご家庭も多いです。これは元々骨格が正しく育っていたら、そうあったであろうお顔立ちと理解してください。
「大丈夫です。縄文人の顎を目指す治療ではありませんので、ご安心ください。」とお答えをいたしました。
それでもランパセラピーは審美ではない
ランパセラピーによって、お顔立ちはスッキリされたとお感じいただけたと思います。
健全な骨格へ導くことで「健全な呼吸機能や口腔機能を取り戻そう」が、ランパセラピーによる治療の根幹です。どこかのタイミングで正しくない方向へ道を違えてしまったんです。違えた道は、進めば進むほど、正しい道とは遠くなってしまうものです。
その原因は「口呼吸」。舌が上顎につき、鼻呼吸ができていれば、中顔面はRAMPAで与える上前方方向への力のベクトルを、舌の役割によって得られます。口呼吸によって、鼻腔と気道が狭くなり、舌が上顎につくと呼吸に支障があるから、RAMPAの装置が必要になります。
どのような言葉が適切なのかは分かりませんが、健全な骨格に対しての正直な顔貌は「皆、よいお顔立ちになってるなぁ」と感じさせてくれるものです。
どうしても矯正治療は「審美」に重心をかけがちですが、この骨格の変化は「呼吸」の改善に繋がります。呼吸とは、酸素を身体に取り入れる機能です。生活上は一見問題がなくても、酸素不足の状況にはない証明にはなりません。お子様のポテンシャルにはまだまだ伸び代があります。
ですが、これらはランパセラピーだから言えること。むしろ、歯並びや顔立ちの変化は、ランパセラピーにとっては副産物です。
「お顔立ち」を目的に矯正相談にお越しになられる方がいらっしゃいますが、外見の変化は結果であって、目的ではありません。
治療中に「Eラインが‥」とか「もう少し鼻を‥」と希望される親御様が、時折いらっしゃいます。それらはランパセラピーの目的や範疇と異なります。
参考文献:
Buschang PH, Fretty K, Campbell PM. Can commonly used profile planes be used to evaluate changes in lower lip position? Angle Orthod. 2011;81(4):557-563.
DOI: 10.2319/081710-483.1 / PMID: 21299383
Bishara SE, Jakobsen JR, Hession TJ, Treder JE. Soft tissue profile changes from 5 to 45 years of age. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 1998;114(6):698-706.
DOI: 10.1016/S0889-5406(98)70203-3 / PMID: 9844211
Hsu BS. Comparisons of the five analytic reference lines of the horizontal lip position: their consistency and sensitivity. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 1993;104(4):355-360.
DOI: 10.1016/S0889-5406(05)81333-2 / PMID: 8213657
Bishara SE, Hession TJ, Peterson LC. Longitudinal soft-tissue profile changes: a study of three analyses. Am J Orthod. 1985;88(3):209-223.
DOI: 10.1016/S0002-9416(85)90216-7 / PMID: 3862344
カテゴリー:
SNSでシェアする
この記事を書いた人
院長:岡井有子
大阪歯科大学大学院歯学研究科修了:歯学博士
医療法人社団セントワ理事長
所属学会
- 日本小児歯科学会
- 日本小児耳鼻咽喉科学会
- 日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会
- 日本ダウン症学会
所属研究会
- RAMPA研究会
- 歯科保健医療国際協力協議会
- 赤ちゃん歯科ネットワーク
2025年学会発表抜粋
- European Conference on Dentistry and Oral Health
- MENA Congress for Rare Diseases
- CMBBE
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
新着コラム
ランパセラピー検査項目解説



