コラム
柔らかい離乳食と顎の発育不足を指摘する矛盾|離乳食は顎を育てる小児矯正「赤ちゃん歯科の価値」
BLW(離乳食)は骨格育成と脳への刺激 赤ちゃん歯科の役割|矯正治療は最後の補正手段
柔らかい離乳食は、顎を育てません。
噛む力を使わなければ、顎の骨は十分な刺激を受けられず、本来の大きさに育ちません。顎が育たなければ、歯が並ぶスペースも生まれない。将来の歯並びと矯正の必要性は、0歳の食卓で、すでに始まっています。
逆に言えばーー正しく与えられた離乳食は、顎を育てるいわば最初の矯正治療です。
噛むという行為は、骨格を育てると同時に、脳への刺激でもあります。赤ちゃん歯科が0歳から関わる理由は、むし歯予防だけではありません。将来、矯正治療を必要としないために、顎をつくるための介入は、0歳から始まります。

矯正治療とは、最後の補正手段であるべきです。
当院の矯正治療「ランパセラピー」では、不正咬合の原因の多くは、中顔面といわれる鼻周りを中心とした領域の骨格的な発達不良としています。
その骨格的な発達不良に対して、本来あるべき成長方向への発達を促し、健全な骨格へと整えていこうというのがランパセラピーの基本の考え方です。
中顔面の発達の問題
では、中顔面の骨格的な発達不良で終わらせず、「その骨格的な発達不良の原因ってなんだろう?」と考えてみましょう。
下のようなイラストはよく見かけられると思います。人類の遠い祖先から続く、食生活の変化による咀嚼回数の問題も無視できるものではありません。


ただ、これらの話は世に溢れ、口腔域の発達不良は、さも食生活が悪の根源のような印象を受けます。
より意義のあるお口の発達を考えた場合、子どもたちが現代社会において置かれている環境についても目を向けねばなりません。
遡って例えれば、市販のドロドロベタベタの離乳食ではお口は発達は見込めません。赤ちゃん期からの「かみかみ」は非常に大切な成長の過程です。
諸説ありますので、数値に関しては目安と傾向となります。
縄文時代から現代にかけて、日本人の「不正咬合(歯並びの乱れ)」と「正常咬合(きれいな歯並び)」の割合は、歴史の歩みとともに逆転しています。縄文時代は「ほぼ100%が正常咬合」だったのに対し、現代人は「約60%〜70%以上に何らかの不正咬合」の傾向があると指摘されています。
1. 縄文時代:不正咬合は「ほぼゼロ(1%未満)」
縄文人の人骨を調査すると、歯並びがガタガタな(叢生など)骨はほとんど見つかりません。ほぼすべての人が、親知らずまで真っ直ぐ生え揃っているそうです。
- 特徴:顎の骨が非常に強固で、横に広く四角い顔立ちをしています。
- 食生活が「超・硬食」だったのも大きな理由。干し肉、木の実、硬い貝類などを日常的に全力で噛む必要があったため、咀嚼筋が発達し、顎の骨も大きく育ちました。歯が並ぶためのスペースはできやすい環境です。
2. 弥生時代〜江戸時代:徐々に不正咬合が増加
弥生時代に「稲作(米食)」が始まると、日本人の顎と歯並びに変化が訪れます。
- 弥生〜鎌倉時代:調理技術が進み、食べ物を「煮て柔らかくする」文化が定着し始めます。噛む回数が減ったことで、顎のサイズが徐々に小さくなり始め、ここで数%〜10%程度の割合で不正咬合が見られるようになります。
- 江戸時代:白米を食べる習慣が広がり、さらに「一汁一菜」のような柔らかい食事が中心になります。特に肉体労働をしない貴族や将軍家、都会の町人の間で顎の退化が進み、不正咬合の割合は15〜20%程度まで上昇したとされています。
3. 明治〜昭和初期:西洋食の流入と「受け口」の増加
明治維新以降、肉やパン、洋菓子といった西洋の食文化が一気に流入します。
- 特徴:食べ物がさらに柔らかくなったことで、顎の成長が明確に遅れ始めます。
- 割合:この頃になると、全体の約30%近くの人に、歯の重なりや上下の顎のバランスが崩れた不正咬合が見られるようになります。
4. 現代(昭和後期〜2020年代):6〜7割以上が不正咬合に
戦後の高度経済成長期から現代にかけて、日本人の食生活は「ほとんど噛まなくても飲み込めるもの」で埋め尽くされるようになりました。
厚生労働省の「歯科疾患実態調査」などによると、現代の日本人の歯並びの割合は以下のようになっています。
- 不正咬合の割合:約60%〜70%
- 最も多いタイプ:叢生(乱ぐい歯)がダントツの1位です。
- 現代の構造: 顎の骨はどんどん細く小さくなっているにも関わらず、「永久歯の大きさ自体は、縄文時代から大きく変わっていない」というミスマッチが起きています。
不正咬合は、人類の「食の変化」と密接に結びついた現代病の一つとも考えられます。ただ、それは不正咬合の原因の小さくはない一要素。どこを見ても、食生活の変化が諸悪の根源のように記載されています。
特に現代はお子様の「口呼吸」や「姿勢の悪さ」も重なり、骨格が正しく育ちにくい環境にあるため、不正咬合が非常に高い割合になっているというのが現状です。
お口の発達について、「咀嚼筋の問題が全て」かのような記載がされています。もちろん小さくはない要素です。ですが、他はただのおまけ(補強要素)なのか?」というと、実はそうではありません。
「咀嚼筋の力」と「それ以外の要素」は、どちらが主・従という関係ではなく、複合的な要素として骨格を形作っています。
そもそも咀嚼筋は咀嚼に関わる筋肉群の総称
咀嚼筋を構成する4つの筋肉。そして、「舌」は咀嚼筋群ではありません。
- 咬筋(こうきん)
場所:頬のあたりにあります。奥歯をグッと噛み締めたときに、エラのあたりで硬く盛り上がる筋肉です。
役割:下顎を引き上げ、食べ物を噛むための「主役」です。人体の中で最も単位面積あたりのパワーが強い筋肉の一つとされています。
- 側頭筋(そくとうきん)
場所:頭の横(こめかみあたり)に広がる、扇状の大きな筋肉です。奥歯を噛み締めると、こめかみがピクピク動くのがこれです。
役割:下顎を引き上げると同時に、顎を後ろに引く役割を持ちます。噛み合わせの「位置調整」に深く関わっています。
- 内側翼突筋(ないそくよくとつきん)
場所:下顎の骨の内側(裏側)に隠れている筋肉です。外からは触れません。
役割:「咬筋」と対になって、下顎を挟み込むようにして上に引き上げます。
- 外側翼突筋(がいそくよくとつきん)
場所: 顎関節のすぐ近く、深部にあります。
役割: 他の3つが「顎を閉じる」のに対し、この筋肉は「下顎を前に突き出す」「口を開ける」「顎を左右にすり潰すように動かす」という、複雑な動きを担当しています。
咀嚼筋が働くのは「食事の時」だけ
咀嚼筋が全力で強い力を発揮するのは、基本的に「物を噛んでいる時」です。 現代人の1日の合計咀嚼時間は、約10〜20分(縄文人は数時間)とされています。つまり、咀嚼筋による強い刺激は、1日のうちのほんのわずかな時間しかありません。
それに対して、「呼吸」「姿勢」「舌の位置」は24時間ノンストップで骨格に影響を与え続けています。骨は「一瞬の強い力」よりも「弱くても持続的な力」によって形が変わる性質もあるため、睡眠中も含めた24時間の環境が非常に重要です。
咀嚼筋以外の「重要」な要素
- 「舌(ベロ)」の押し出す力と支える力
正常な人のベロは、上顎の裏(スポット)にぴったりと張り付いています。ベロは強力な筋肉の塊であり、内側から上顎を押し広げることで、きれいなU字型の歯列を作ります。
しかし、現代人は顎が小さく口呼吸も多いため、ベロが下に落ちる「低位舌(ていいぜつ)」になりがちです。内側からの押し出しがなくなり、外側(頬・唇)の筋肉の圧力が優位になるため、上顎は狭くなります。子どものストローの使用を心配するのもこのためです。
- 鼻呼吸:内側(ベロ)と外側(頬・唇)の力のバランスが取れ、顎が正しく成長しやすい。
- 口呼吸:内側の力が消え、外側の力だけが勝つため、顎が狭くなりやすい。
そして、もう一つ。低位舌は上顎を支えられません。すると、上顎の位置は落ちてきます。「重力」がかかっているからです。
- 「姿勢(頸椎の傾き)」と頭重のバランス
頭が前方に突き出た姿勢(ストレートネックや猫背)になると、首の前側の筋肉や、のど周辺の筋肉(舌骨筋群)が、下方向へ強く引っ張られます。 これにより下顎が後ろに引かれ、物理的な口呼吸となってしまいます。
咀嚼筋、舌の位置や姿勢、これらは相互的に影響しあっています。
【硬いものを噛まない(咀嚼筋の低下)】 ↓ 【顎の骨が横にも前にも育たない】 ↓ 【鼻腔(鼻の空気の通り道)が狭くなる】 ↓ 【鼻で息がしづらいので「口呼吸」になる】 ↓ 【口を開けるために「姿勢」が崩れ、日常的にベロが下がる】 ↓ 【さらに顎が育たなくなり、ガタガタの歯並び(叢生)になる】
例えば、縄文人は、硬いものを噛むことで「咀嚼筋」を鍛えたと同時に、「正しい鼻呼吸」「正しい舌の位置」「まっすぐな姿勢」がキープできる骨格を維持していました。
現代人の不正咬合の改善において、単に「筋力をつけましょう」だけでは解決しないのはこのためです。「呼吸のルートを確保し、姿勢を正し、ベロを正しい位置に戻す」という、24時間の環境づくりこそが「鍵」です。
ただ、舌の役割とは、顎の骨格を正しく育てることであって、間違った成長をした骨格を直すことはできません。
子どもたちの置かれている環境
さて現代、先ほどお伝えした中顔面の骨格的な発達不良は、赤ちゃん期からの骨格が、本来望ましくないイレギュラーな筋緊張や筋肉のアンバランスなどの干渉を受けて育った影響が大きい。
これには、新生児期からの抱っこの仕方や抱っこ紐の使い方、そして離乳食など様々な生活習慣が関わります。それらの習慣が積み重なり、口呼吸の日常化を経て、中顔面の発達に問題を引き起こします。
具体的にいえば、様々な視点にメリットを据え普及している、赤ちゃんに関するグッズやメソッドが、必ずしも赤ちゃんの成長にはベストではない場合があるということです。
むし歯の罹患児は減っている一方で、不正咬合の傾向があるお子様は増えています。
SNSでは、赤ちゃんのための発信ではなく「親がどうしたら負担を少なくできるか?」という視点が多く見受けられます。SNSを見るのも困っているのも親御様。もちろん、その視点は大切ですが、赤ちゃんが置き去りになっていたら本末転倒です。
でも、赤ちゃんに視点を移したら、親御様には「こういうことも、ああいうことも頑張りましょう」と重荷にもなります。その結果が、この状況の一因なのではないかと危機感を感じています。
もちろんご家庭ごとにご事情があることと思います。頭ごなしに否定をするのは乱暴です。ですが、便利グッズや情報を得る手段もない中で、私たちの親たちは育ててくれました。親が大変なのはどの世代でも一緒です。
当院の離乳食教室(BLW)
例えば、先ほどの離乳食。一方では咀嚼力が大切と発信されながら、ベタベタの離乳食が普及している。ここにも矛盾を感じられませんでしょうか?
当院の離乳食教室でベースとしている「BLW(Baby-Led-Weaning)」もどこか異端扱い、ドロドロベタベタの離乳食が正解の空気感があります。
メリット・デメリットの価値観の主役とは、一体誰なのでしょうか?
日々の生活の中、いろいろ言われても親御様も大変です。過度にどちらかによることなく、ご家庭なりの折り合いをつけながら、少しずつでいいと思います。単純に「YES・NO」で処理できる情報はそうはないものです。
従来の離乳食
主役→親(食べさせる)
形状→ドロドロのピューレ状
進め方→スプーンで段階的に
目的→栄養を効率よく摂る
BLW
主役→赤ちゃん(自分で食べる)
形状→掴める大きさの固形(柔らかい)
進め方→家族と一緒に最初から固形
目的→食への好奇心・食べる能力を育てる


BLWの発達的なメリット
- 顎の発育を促す:自分の手で掴み、前歯で噛み取り、奥の歯ぐきですり潰す動作を繰り返すことで、顎の骨や咀嚼筋が自然に鍛えられます。
- 手と目の協調運動:目で見て、手で掴んで、口まで運ぶという一連の動作が、脳や手先の発育によい影響を与えます。
- 「噛む」ことへの集中:スプーンで流し込まれるのと違い、自分のペースで「どう噛めば飲み込めるか」を脳が学習するため、丸呑みの癖がつきにくくなります。
BLWの注意点と安全性
親御様が一番心配されるのが「喉に詰まらせないか」という点ですね。「目を離さない」などの注意はもちろん必要です。
- 「えずき」と「窒息」:赤ちゃんは喉の奥に異物が入るときに「オエッ」となる反射点が大人より手前にあります。これは安全装置なので、悪いことではありません。
- 避けるべき食材:丸くて硬いもの(ミニトマト、ブドウ、ナッツ、飴など)・粘り気が強いもの(餅、パンなど)は避けます。
- 姿勢:必ず背筋を伸ばして座らせることが鉄則です。寝かせた状態で固形物を与えるのは絶対NGです。
BLWの始め方の目安
- 時期:生後6ヶ月頃から(腰がしっかり座り、食べ物に興味を示し始めたら)。
- 形:赤ちゃんの握りこぶしからはみ出すくらいのスティック状が理想です。短いと噛み切る練習にならず、丸呑みする恐れがあります。
- 硬さ:親の指で簡単に押しつぶせるくらいの柔らかさ(蒸し野菜など)から始めます。
なぜ歯並びが悪くなる?【離乳食はその一面】
お口ポカンは癖ではないかも!お子様がお口を閉じることができない。その「なぜ?」を理解してあげないとお子様のお口ポカンは「悪癖」としか目に映りません。
そのきっかけは本当に癖だったかもしれない。そうではなかったかもしれない。離乳食のお話しはその可能性の一面です。
いずれにしても、口呼吸(低位舌)の積み重ねは、中顔面の健全な成長を阻害し、骨格の問題へと進展します。その影には、人間の身体に24時間かかり続ける力、「重力」の存在。そしてその進展は、思いの外、早くて速い。
こうなると、「なぜ、お口ポカン?」の答えは、どこかのタイミングで骨格の問題へと入れ替わります。本ページの冒頭が矯正治療の話で始まったのは、「だから」なんですね。

- 口呼吸は、イラストの青矢印の力を失わせます。
- 支えのなくなった中顔面(上顎)は、重力の影響から、成長方向を下方へ向かわせます。
- その結果が冒頭の歯並びが悪くなる原因、「中顔面といわれる鼻周りを中心とした部分の骨格的な発達不良」です。
- そして、「子どもの骨格は、1歳までにその約80%が完成する」といわれています。

口呼吸のリスクとは?- むし歯・歯周病のリスク
- 免疫力の低下
- 姿勢の悪化
- 歯並びの悪化
- 脳への酸素不足
- 顔立ちの変化
- 睡眠の質の低下
そして、最も大切なのが、骨格の問題へと進展した口呼吸のリスクは、そう簡単に回避できなくなるということです。
赤ちゃんの口呼吸の原因とは?

では赤ちゃんの口呼吸(お口ポカン)の原因とは何なのか?離乳食のお話しも無関係ではありません。
ただ、その最大の答えは、「赤ちゃんなりの姿勢の悪さ」です。これが「本来望ましくないイレギュラーな筋緊張や筋肉のアンバランスなどの干渉」を生み出す正体。
いわば「植物の誘引」のような状態です。

写真のような赤ちゃんの光景はよく見かけます。これが「赤ちゃんなりの姿勢の悪さ」の一例です。
赤ちゃんのこの姿勢は、赤ちゃんの首や肩に負担をかけます。筋肉の緊張という状態です。
この筋肉の過緊張は「舌骨(ぜっこつ)」という骨の位置を引き下げます。

舌骨は、肩からの筋肉(肩甲舌骨筋)と舌や下顎からの筋肉(顎舌骨筋など)の両方に繋がっています。姿勢の悪さによる肩甲舌骨筋の過緊張は、舌骨の位置を引き下げ、別の筋肉を通じて、舌と下顎を引き下げます。
下がった舌は気道を狭くするので息苦しいですよね。これでは口呼吸も仕方がないです。
鼻がつまっているわけでもないのに、なぜか口呼吸やいびき。それは、姿勢の悪さが原因かもしれません。
ですが、ここまでなら筋肉の緊張の問題。赤ちゃんは非常に柔軟性があります。まだ赤ちゃんの時期ならば、口呼吸の前段階、望ましくない筋肉の緊張によって生じた受け口※などは、優しくほぐしてあげることで改善できる場合も多いです。
※口呼吸が息苦しい赤ちゃんは、無意識的に気道を開けるために受け口になることがあります。
このことは、このまま成長を続けていれば、歯並びが悪くなっていたかもしれない可能性への「対処(予防、もしくは治療)」といえます。
親御様の判断による様子見は、赤ちゃんの成長に大切な過程を見逃すことになりかねませんので、ぜひ意識されてください。無用な筋肉の過緊張は、正しくない成長のガイド役になってしまいます。
口呼吸・いびき・受け口気味は、赤ちゃんからのSOSサインです。
口呼吸の原因が「骨格」の問題に入れ替わってしまったら、改善のハードルは格段に上がります。なにより、「何をどこまで改善できるのか?」という不可逆的な要素まで浮かび上がってきてしまいます。

その骨格の成長の証が「まるい顎」と「さんかくの顎」の違い。「さんかくの顎」は、口呼吸が日常的になり、骨格にネガティブな影響が表出している子どもの典型的な顎の形です。そしてこれが「顎が小さい」の正体です。
こうなってしまうと「抜歯?歯列?骨格?」と矯正治療の負担が現実になってきます。そうならないように、矯正治療は最後の補正手段と考えられてください。まるい顎に育ち、歯並びを整える程度の矯正治療で済めば、親御様の「赤ちゃん歯科」は大成功です。
赤ちゃん歯科とは知識
まだ赤ちゃん期であれば、それらの問題は筋肉の過緊張が原因とできるかもしれません。しかし、それらの生活習慣は気を付けてあげないと同じことの繰り返しです。赤ちゃんには相応の負担はかかっています。
当院の赤ちゃん歯科では、親御様にまずはそれらの事柄を知っていただきたいと考えています。現代社会において、なかなか全てを叶えるのは難しいですが、知ってさえいればちょっとした場面での判断材料にはなります。
利便性と引き換えにする、0歳からの発達リスク
結論:おしゃぶりの常時使用は学習機会と正しい咬合を阻害します
- 便利さの裏側にあるのは成長の空白
泣き止ませや入眠に便利な「おしゃぶり」ですが、昨今謳われる「顎の発達や鼻呼吸を促す」という宣伝文句に、現時点での医学的・学問的根拠はありません。むしろ、安易な常用は親子のふれあいや、乳児期に不可欠な「探索行動(口で物を確かめる学習)」の機会を失う心配があります。
- 小児歯科と小児科の視点
小児科では、赤ちゃんの精神安定の側面から許容されることが多い一方で、小児歯科では「歯並びへの悪影響」を重くみています。
- 当院の推奨:おしゃぶりとの向き合い方
歯科医院としては、「おしゃぶり」のおすすめはできません。ただ、親御様はそれに助けられる場面が確かにあります。解決にはなりませんが、おしゃぶりはお口にとって決してよいものではない。これを知っているだけで行動が変えられます。
どうか、安易に「育児の便利グッズ」にはしないでください。おしゃぶりで口を塞ぐのではなく、声掛けや遊びを通じて、お子様の「してほしい」という要求に寄り添う時間を優先してください。
そして、大切なこと。おしゃぶりが「鼻呼吸」を促進することはありません。咥えているから、鼻呼吸しかできないだけで、それは今だけのお話しです。おしゃぶりを咥えている間、舌は上顎につきません。親御様はこの危険性をすでにお分かりですね。
つまり、親御様の意思によって、中顔面の発達不良を導いているということになります。
赤ちゃん歯科は、何か特別な治療を行うための存在ではありません。食べ物や空気の入り口である鼻や口がどれほど大事なものか。そして現代、そこにどれほどの問題を抱えているのかを親御様へお伝えするために赤ちゃん歯科はあります。
赤ちゃん歯科、その目的は、お口の問題から派生しうる様々な問題の「予防」です。
※これらに関して具体的なお話しは実際のご相談でさせていただきます。これは万一、文面によるご理解に齟齬があった場合、一番困るのは赤ちゃんとの考えによります。
ただ、そんなに過度に悲観されないでください。お口を育てることはそう簡単ではないんです。
大切なことは、舌骨の位置を下げるようなイレギュラーな筋緊張をなるべく赤ちゃんに与えないこと。「生まれつき」であろうが、「成長の結果」であろうができることはあります。決して「仕方がない」と諦めないでください。
呼吸と歯並び
呼吸は、人間の活動において最も基本的な事柄の一つです。呼吸に不具合があった場合、人間の身体は何かを犠牲にしてでも、呼吸を確保しようという本能が働きます。
そして、口呼吸は立派な呼吸に関する不具合です。口呼吸は、気道を狭くさせます。無意識的に身体が気道を拡げようとした結果、さらに姿勢が悪くなる、もしくは受け口になります。人間の身体は呼吸を確保するためなら、姿勢や歯並びは二の次と優先順位を付けるんですね。
ここからが悪循環の始まり。口呼吸の弊害は、いずれ歯並びの問題を含め、顕在化してきます。
年齢に関わらず、歯並びと呼吸はセットで考えられてください。口呼吸が日常となっていれば、それはすでに健全な状態とはいえません。歯並びが悪いことが、呼吸に関する不具合の結果だとしたら、「まず何を正さなくてはいけないのか?」ですね。
その裏には、呼吸に不具合があれば「これから歯並びが悪くなっていくかもしれない」との予測も成り立ちます。正しい鼻呼吸が、結果的によい歯並びに繋がってきます。
そして歯並びを悪くさせないためには「何をしなくてはならないのか?」もですね。
答えは同じです。正しい鼻呼吸が、結果的によい歯並びに繋がってきます。
その障害となる口呼吸を誘引する要因が、赤ちゃん期からの生活習慣(筋肉の干渉)ということです。
歯並びは赤ちゃん期からの積み重ねの結果
赤ちゃんの時期から上手にお口を育ててあげられれば、将来的に矯正治療が必要なくなるか、その負担は小さいものになる可能性が高くなります。それは歯並びのことにとどまらず、健康そのものにも関わってきます。
質の良い呼吸が、質の良い生活や質の良い睡眠の基礎となります。
MFT(口腔筋機能療法)など、一部の矯正治療も同様の視点となりますが、赤ちゃん歯科はさらにその前の段階のお話しです。当院では、赤ちゃんの歯医者のスタートは、生後すぐからと考えています。
「それらを知らずにきてしまった‥」などで、成長が進み、ある程度骨格ができあがってしまった。そうなってしまった場合の次のアプローチが、骨格的な発達不良に対してのランパセラピー(矯正治療)です。目的は同じ、骨格の正しい成長です。予防的意義の「赤ちゃん歯科」、治療的意義の「ランパセラピー」となります。



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この記事を監修した人
こどもと女性の歯科クリニック
院長 岡井有子
看護師として京都府内産婦人科等勤務を経て、大阪歯科大学に入学。大阪歯科大学大学院歯学研究科で小児歯科学を学ぶ。歯学博士。
2017年東京都港区麻布十番にランパセラピー専門医院「こどもと女性の歯科クリニック」開院。
2024年「医療法人社団セントワ」開設。同法人理事長就任。
日本小児歯科学会・日本小児耳鼻咽喉科学会・日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会・日本ダウン症学会所属。
RAMPA研究会・赤ちゃん歯科ネットワーク所属。
2025年European Conference on Dentistry and Oral Health(パリ)、MENA Congress for Rare Diseases(アブダビ)などにおいて、ランパセラピー学会発表。
プライベートでは2児の母として忙しい毎日を送っている。
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