コラム
柔らかい離乳食と顎の発育不足を指摘する矛盾|離乳食から赤ちゃんの顎と歯並びを育てる
「BLW」は顎の発育と脳への刺激 歯科医が伝える離乳食|「噛む→舌を使う→飲み込む」が重要
柔らかい離乳食は、顎を育てません。
噛む力を使わなければ、顎の骨は十分な刺激を受けられず、本来の大きさに育ちません。
ですが噛む力だけで、育つわけではありません。
顎が育たなければ、歯が並ぶスペースも生まれない。将来の歯並びと矯正の必要性は、0歳の食卓から、すでに始まっています。
逆に言えば——正しく与えられた離乳食は、顎を育てるいわば予防的矯正治療です。
噛むという行為は、骨格を育てると同時に、脳への刺激でもあります。赤ちゃん歯科が0歳から関わる理由は、むし歯予防だけではありません。将来、矯正治療を必要としないために、顎をつくるための介入は、0歳から始まります。
赤ちゃんの顎を育てる離乳食とは
離乳食の目的は、栄養を摂るだけではありません。自分の手で口へ運ぶ、噛む、舌を動かす、飲み込む——その一つひとつが、お口の機能と顎の発達を育てる経験です。
ただし、「硬いものを噛ませれば顎が育つ」という単純な話でもありません。「噛むこと」は、骨への刺激にはなっても、顎を育てる「道しるべ」にはなりません。
その役割を担うのは「舌」です。顎を育てる機能のすべてが大切です。お口の機能と顎の発達は相互関係なのです。
舌・姿勢・呼吸・骨格——それらを土台にお口は育っていきます。噛むこと、咀嚼筋——それらで足りるわけではないのです。
離乳食は、いつ、何を食べるか
少しだけ矯正治療のお話をします。
当院の矯正治療「ランパセラピー」では、歯並びが悪くなる原因の多くは、中顔面といわれる鼻周りを中心とした領域の骨格的な発達不良としています。
その骨格に対して、本来あるべき成長方向への発達を促し、健全な骨格へと整えていこうというのがランパセラピーの基本の考え方です。
ですが原因は「骨格」。つまり、どこまで改善できるかを明示することはできません。
矯正治療を当てにし過ぎず、まずは赤ちゃんのお口をちゃんと歯が生えてこられるように育ててあげてください。矯正治療は、最後の補正手段であるべきだと思います。
ですが、ここでの主役は赤ちゃんです。中顔面の骨格的な発達不良で終わらせず、「その骨格的な発達不良の原因ってなんだろう?」と考えてみましょう。
下のようなイラストはよく見かけられると思います。人類の遠い祖先から続く、食生活の変化による咀嚼回数の問題も無視できるものではありません。
より意義のあるお口の発達を考えた場合、子どもたちが現代社会において置かれている環境についても目を向けねばなりません。
遡って例えれば、市販のピューレ状の離乳食ではお口の発達は見込めません。赤ちゃん期からの「かみかみ」は非常に大切な成長の過程です。
お口の発達について、「咀嚼筋の問題が全て」かのような記載がされています。もちろん小さくはない要素です。ですが、他はただのおまけ(補強要素)なのか?」というと、実はそうではありません。
「咀嚼筋の力」と「それ以外の要素」は、どちらが主・従という関係ではなく、複合的な要素として骨格を形作っています。
そもそも咀嚼筋は咀嚼に関わる筋肉群の総称
咀嚼筋を構成する4つの筋肉。そして、「舌」は咀嚼筋群ではありません。
- 咬筋(こうきん)
場所:頬のあたりにあります。奥歯をグッと噛み締めたときに、エラのあたりで硬く盛り上がる筋肉です。
役割:下顎を引き上げ、食べ物を噛むための「主役」です。人体の中で最も単位面積あたりのパワーが強い筋肉の一つとされています。
- 側頭筋(そくとうきん)
場所:頭の横(こめかみあたり)に広がる、扇状の大きな筋肉です。奥歯を噛み締めると、こめかみがピクピク動くのがこれです。
役割:下顎を引き上げると同時に、顎を後ろに引く役割を持ちます。噛み合わせの「位置調整」に深く関わっています。
- 内側翼突筋(ないそくよくとつきん)
場所:下顎の骨の内側(裏側)に隠れている筋肉です。外からは触れません。
役割:「咬筋」と対になって、下顎を挟み込むようにして上に引き上げます。
- 外側翼突筋(がいそくよくとつきん)
場所: 顎関節のすぐ近く、深部にあります。
役割: 他の3つが「顎を閉じる」のに対し、この筋肉は「下顎を前に突き出す」「口を開ける」「顎を左右にすり潰すように動かす」という、複雑な動きを担当しています。
咀嚼筋が働くのは「食事の時」だけ
咀嚼筋が全力で強い力を発揮するのは、基本的に「物を噛んでいる時」です。 つまり、咀嚼筋による強い刺激は、1日のうちのほんのわずかな時間しかありません。
それに対して、「呼吸」「姿勢」「舌の位置」は24時間ノンストップで骨格に影響を与え続けています。骨は「一瞬の強い力」よりも「弱くても持続的な力」によって形が変わる性質もあるため、睡眠中も含めた24時間の環境が非常に重要です。
咀嚼筋以外の「重要」な要素
- 「舌(ベロ)」の押し出す力と支える力
正常な人のベロは、上顎の裏(スポット)にぴったりと張り付いています。ベロは強力な筋肉の塊であり、内側から上顎を押し広げることで、きれいなU字型の歯列を作ります。
しかし、現代人は顎が小さく口呼吸も多いため、ベロが下に落ちる「低位舌(ていいぜつ)」になりがちです。内側からの押し出しがなくなり、外側(頬・唇)の筋肉の圧力が優位になるため、上顎は狭くなります。子どものストローの使用を心配するのもこのためです。
- 鼻呼吸:内側(ベロ)と外側(頬・唇)の力のバランスが取れ、顎が正しく成長しやすい。
- 口呼吸:内側の力が消え、外側の力だけが勝つため、顎が狭くなりやすい。
そして、もう一つ。低位舌は上顎を支えられません。すると、上顎の位置は落ちてきます。「重力」がかかっているからです。
- 「姿勢(頸椎の傾き)」と頭重のバランス
頭が前方に突き出た姿勢(ストレートネックや猫背)になると、首の前側の筋肉や、のど周辺の筋肉(舌骨筋群)が、下方向へ強く引っ張られます。 これにより下顎が後ろに引かれ、物理的な口呼吸となってしまいます。
咀嚼筋、舌の位置や姿勢、これらは相互的に影響しあっています。
【硬いものを噛まない(咀嚼筋の低下)】 ↓ 【顎の骨が横にも前にも育たない】 ↓ 【鼻腔(鼻の空気の通り道)が狭くなる】 ↓ 【鼻で息がしづらいので「口呼吸」になる】 ↓ 【口を開けるために「姿勢」が崩れ、日常的にベロが下がる】 ↓ 【さらに顎が育たなくなり、ガタガタの歯並び(叢生)になる】
例えば、縄文人は、硬いものを噛むことで「咀嚼筋」を鍛えたと同時に、「正しい鼻呼吸」「正しい舌の位置」「まっすぐな姿勢」がキープできる骨格を維持していました。
現代人の不正咬合の改善において、単に「筋力をつけましょう」だけでは解決しないのはこのためです。「呼吸のルートを確保し、姿勢を正し、ベロを正しい位置に戻す」という、24時間の環境づくりこそが「鍵」です。
ただ、舌の役割とは、顎の骨格を正しく育てることであって、間違った成長をした骨格を戻すことはできません。
離乳食は5〜6ヶ月ではなく、以下の3条件が揃ったら
成長は赤ちゃんそれぞれです。
月齢は目安にはなりますが、そこからズレてしまうことで、親御様は本来無用な圧力を感じてしまいます。
大丈夫です。焦らないでください。他の子と比べる必要もありません。もし心配なら、親御様の判断で無理に進めず、医療に相談してください。
成長は、早く進むより、着実に進む方がよっぽど大事です。
離乳食の開始時期は月齢ではなく、以下の3条件が揃ってからで十分です。
- 赤ちゃんが上手におっぱいが飲めるようになってから
- お座りが自分からできるようになってから
- 赤ちゃんが食べたそうな素振りをみせてから
※「おっぱいを上手に飲める」とは、深飲みでしっかり飲めて、おっぱいを飲む時間にリズムができていることをいいます。
※「自分からできるお座り」とは、補助器具に座らせるのではなく、ハイハイでたどり着いた先で、自ら「よいしょ」と腰を下ろせることをいいます。
当院の離乳食についての向き合い方
咀嚼力が大切と発信されながら、一方でベタベタの離乳食が普及している。ここに矛盾を感じられませんでしょうか?
当院の離乳食教室でベースとしている「BLW(Baby-Led-Weaning)」もどこか異端扱い、ドロドロベタベタの離乳食が正解の空気感があります。
メリット・デメリットの価値観の主役とは、一体誰なのでしょうか?
赤ちゃん期からの「かみかみ」は、非常に大切な成長の過程です。
当院の離乳食教室では、食べ物の味、形状、あったかい・冷たいなど、きちんと赤ちゃんに伝えてあげたい。これらの取り組みは、脳の発達にも関わります。
とはいえ、日々の生活の中、いろいろ言われても親御様も大変です。過度にどちらかによることなく、ご家庭なりの折り合いをつけながら、少しずつでいいと思います。単純に「YES・NO」で処理できる情報はそうはないものです。
BLWとは
BLWとは、「Baby-Led Weaning(ベビー・レッド・ウィーニング)」の略です。日本語では、「赤ちゃんが主体となって進める離乳」と訳されるでしょうか。
一般的な離乳食では、親御様がスプーンでペースト状の食べ物を口へ運び、少しずつ形や硬さを変えていきます。
一方BLWでは、赤ちゃんが自分の手で食べ物をつかみ、自分の口へ運びます。食材は、赤ちゃんが握れる大きさで、歯がなくても歯ぐきでつぶせる程度の柔らかさに調理します。
つまりBLWで大切なのは、単に「固形物を早く食べさせること」ではありません。
- 見る
- 手を伸ばす
- つかむ
- 口へ運ぶ
- 噛む
- 舌を使う
- 飲み込む
この一連の動きを、赤ちゃん自身が経験することに意味があります。
食べるという行為は、栄養を身体へ入れるだけではありません。顎や舌、唇、頬の筋肉を使い、手と目を協調させ、食べ物の硬さ・形・温度・味を感じながら、脳も一緒に学習しています。
歯科の立場から特に大切なのが、「噛む→舌を使う→飲み込む」というお口の一連の働きです。
赤ちゃんは、この経験を繰り返しながら、食べるためのお口を育てていきます。そして、そのお口の機能を使う経験は、顎の発育や将来の歯並びを考えるうえでも無関係ではありません。
当院では、離乳食を単なる「栄養摂取の練習」とは考えていません。離乳食とは、赤ちゃんがお口を育てる大切な時間でもあるのです。BLWは、その本来持っている「自分で食べようとする力」を活かす離乳の考え方です。
ただし、BLWなら何でもよいわけではありません。開始時期は月齢だけで決めず、姿勢や発達の状態を見ること。必ず大人が見守ること。窒息しやすい形や硬さの食材を避けることも重要です。
「何を食べるか」だけでなく、「どのように食べるか」。
そこまで含めて考えるのが、歯科医からお伝えする離乳食です。
従来の離乳食
主役→親(食べさせる)
形状→ドロドロのピューレ状
進め方→スプーンで段階的に
目的→栄養を効率よく摂る
BLW
主役→赤ちゃん(自分で食べる)
形状→掴める大きさの固形(柔らかい)
進め方→家族と一緒に最初から固形
目的→食への好奇心・食べる能力を育てる
BLWの発達的なメリット
- 顎の発育を促す:自分の手で掴み、前歯で噛み取り、奥の歯ぐきですり潰す動作を繰り返すことで、顎の骨や咀嚼筋が自然に鍛えられます。
- 手と目の協調運動:目で見て、手で掴んで、口まで運ぶという一連の動作が、脳や手先の発育によい影響を与えます。
- 「噛む」ことへの集中:スプーンで流し込まれるのと違い、自分のペースで「どう噛めば飲み込めるか」を脳が学習するため、丸呑みの癖がつきにくくなります。
BLWの注意点と安全性
親御様が一番心配されるのが「喉に詰まらせないか」という点ですね。「目を離さない」などの注意はもちろん必要です。
- 「えずき」と「窒息」:赤ちゃんは喉の奥に異物が入るときに「オエッ」となる反射点が大人より手前にあります。これは安全装置なので、悪いことではありません。
- 避けるべき食材:丸くて硬いもの(ミニトマト、ブドウ、ナッツ、飴など)・粘り気が強いもの(餅、パンなど)は避けます。
- 姿勢:必ず背筋を伸ばして座らせることが鉄則です。寝かせた状態で固形物を与えるのは絶対NGです。
BLWの始め方の目安
- 時期:腰がしっかり座り、食べ物に興味を示し始めたら。
- 形:赤ちゃんの握りこぶしからはみ出すくらいのスティック状が理想です。短いと噛み切る練習にならず、丸呑みする恐れがあります。
- 硬さ:親の指で簡単に押しつぶせるくらいの柔らかさ(蒸し野菜など)から始めます。
ご家庭ごとに事情はあります。毎日の生活の中では、負担も小さくはないものです。どのような過程を通られるにしても、他のご家庭と比べたり焦ったりせず、成長を見守ってあげて下さい。赤ちゃんには成長する力が備わっています。
ただし、これは様子見、放置を肯定しているものではありません。ご不安がありましたら、必ず医療にご相談ください。現状の評価は、すべてのスタートです。
何のためのBLWか
なぜ歯並びが悪くなるのか、思い出してみてください。
中顔面の骨格的な発達不良は、赤ちゃん期からの骨格が、本来望ましくないイレギュラーな筋緊張や筋肉のアンバランスなどの干渉を受けて育った影響が大きい、私たちはそう考えています。
これには、新生児期からの抱っこの仕方や抱っこ紐の使い方、そして離乳食など様々な生活習慣が関わります。離乳食だけで、何かが劇的に変わるわけではありません。
それらの習慣が積み重なり、口呼吸の日常化を経て、中顔面の発達に問題を引き起こします。
具体的にいえば、様々な視点にメリットを据え普及している、赤ちゃんに関するグッズやメソッドが、必ずしも赤ちゃんの成長にはベストではない場合があるということです。ベタベタの離乳食はその一部です。
赤ちゃんだからこそ、食べ物をきちんと噛み、正しく舌を使い、しっかりと飲み込む。食べ方を覚える。今ある機能を正しく使えば、次の機能が正しく育ちます。
赤ちゃんにとって「食べる」は、栄養を摂るだけの行いではありません。
離乳期は、脳の中でシナプス形成や髄鞘化など、神経回路の発達が活発に進む時期です。そこでは十分な栄養が必要になるだけでなく、さまざまな感覚や運動を経験しながら、脳は身体の使い方を学んでいきます。
食べるという動作も、その大切な経験の一つです。
BLWでは、「見る → 手を伸ばす → つかむ → 口へ運ぶ → 噛む → 舌で動かす → 飲み込む」という一連の動きを、赤ちゃん自身が行います。
特に「噛む」という運動では、顎を動かすだけではありません。人の研究でも、咀嚼によって、運動野・体性感覚野・視床・小脳など、複数の脳領域が活動することが確認されています。
つまり、噛むことは顎や筋肉を使う運動であると同時に、口から得た感覚を脳へ送り、脳がそれに応じて舌や顎の動きを調整する「感覚と運動の学習」でもあります。
赤ちゃんは、さまざまな硬さ・形・温度の食べ物を経験しながら、「どう噛むのか」「どう舌を動かすのか」「どうすれば飲み込めるのか」を覚えていきます。実際、離乳期に異なる食感を経験することは、咀嚼を含む口腔運動機能の発達に重要だと考えられています。
だからこそ、当院が離乳食で大切にしているのは、単に「硬いものを食べさせる」ことではありません。
自分で触れ、自分で口へ運び、噛み、舌を使い、飲み込む——
その一連の経験が、顎を育てると同時に、脳にとっても大切な刺激になると考えています。
参考文献:
・Green JR, Simione M, Le Révérend B, et al. Advancement in Texture in Early Complementary Feeding and the Relevance to Developmental Outcomes. Nestle Nutr Inst Workshop Ser. 2017;87:29-38.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28315885/
・Lin CS. Meta-analysis of brain mechanisms of chewing and clenching movements. J Oral Rehabil. 2018;45(8):627-639.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29782041/
・Gould JF. Complementary Feeding, Micronutrients and Developmental Outcomes of Children. Nestle Nutr Inst Workshop Ser. 2017;87:13-28.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28315884/
むし歯の罹患児は減っている一方で、不正咬合の傾向があるお子様は増えています
SNSでは、赤ちゃんのための発信ではなく「親がどうしたら負担を少なくできるか?」という視点が多く見受けられます。SNSを見るのも困っているのも親御様。もちろん、その視点は大切ですが、赤ちゃんが置き去りになっていたら本末転倒です。
でも、赤ちゃん視点から見たら、親御様には「こういうことも、ああいうことも気をつけましょう」となり、重荷にもなります。親御様には優しくない印象を与え、「受けない」発信はしづらくなります。その結果が、この状況の一因なのではないかと危機感を感じています。
確かに子どものむし歯は減っている。ですが何かしらの不正咬合の傾向がある子どもは増えています。日々の診療や、学校や自治体の歯科検診でも感じる現実です。
もちろんご家庭ごとにご事情があることと思います。頭ごなしに否定をするのは乱暴です。ですが、便利グッズや情報を得る手段もない中で、私たちの親たちは育ててくれました。親が大変なのはどの世代でも一緒です。
利便性と引き換えにする、0歳からの発達リスク
結論:おしゃぶりの常時使用は学習機会と正しい咬合を阻害します
- 便利さの裏側にあるのは成長の空白
泣き止ませや入眠に便利な「おしゃぶり」ですが、昨今謳われる「顎の発達や鼻呼吸を促す」という宣伝文句に、現時点での医学的・学問的根拠はありません。むしろ、安易な常用は親子のふれあいや、乳児期に不可欠な「探索行動(口で物を確かめる学習)」の機会を失う心配があります。
- 小児歯科と小児科の視点
小児科では、赤ちゃんの精神安定の側面から許容されることが多い一方で、小児歯科では「歯並びへの悪影響」を重くみています。
- 当院の推奨:おしゃぶりとの向き合い方
歯科医院としては、「おしゃぶり」のおすすめはできません。ただ、親御様はそれに助けられる場面が確かにあります。解決にはなりませんが、おしゃぶりはお口にとって決してよいものではない。これを知っているだけで行動が変えられます。
どうか、安易に「育児の便利グッズ」にはしないでください。おしゃぶりで口を塞ぐのではなく、声掛けや遊びを通じて、お子様の「してほしい」という要求に寄り添う時間を優先してください。
そして、大切なこと。おしゃぶりが「鼻呼吸」を促進することはありません。咥えているから、鼻呼吸しかできないだけで、それは今だけのお話しです。おしゃぶりを咥えている間、舌は上顎につきません。親御様はこの危険性をすでにお分かりですね。
つまり、親御様の意思によって、中顔面の発達不良を導いているということになります。
離乳食と口呼吸は、別の話ではありません
私たちが重要視しているのは、食べ物の硬さだけではありません。赤ちゃんは食べるとき——
- 噛む → 舌を使う → 食べ物をまとめる → 飲み込む
という一連の動きを繰り返しています。その中心にいるのが「舌」です。
舌は、食べ物を動かすだけの器官ではありません。普段は上顎に位置し、飲み込むときにも上顎を使います。そして、この舌の働きは顎の成長を考えるうえでも大切です。
ところが、口呼吸が日常になっている赤ちゃんでは、舌が上顎から離れ、低い位置に下がりやすくなります。すると、食べるときにも本来使いたい舌の動きが十分に発揮しづらくなります。
せっかく「噛むこと」を意識した離乳食を与えていても、普段から口が開き、舌が上顎についていないのであれば、せっかくの離乳食ももったいない話です。
ここがとても大切です。
「よく噛ませれば顎が育つ」だけでは足りません
よく噛むことは、もちろん大切です。ですが、赤ちゃんが食べている時間は一日のうちのほんの一部です。
それ以外の時間に口呼吸が続き、舌が上顎から離れているのであれば、顎は長い時間、本来受けるはずだった舌からの働きを受けられません。だから当院では——
- 「何を食べるか」
- 「どれくらい噛むか」
- 「普段、舌はどこにあるのか」
- 「鼻呼吸ができているのか」
まで一緒に見ます。離乳食だけを切り取って考えないのは、そのためです。
BLWで育てたいのは、「噛む力」だけではありません
BLWでは、赤ちゃん自身が食べ物を手に取り、口へ運び、噛み、舌で動かし、自分のタイミングで飲み込みます。
つまり、育てたいのは単なる「咀嚼力」ではありません。
舌・唇・顎を使って、自分で食べる一連の機能そのものです。そして、その機能を日常から支えているのが、正常な舌の位置と鼻呼吸です。
だから、「離乳食で顎を育てること」と、「鼻呼吸できるお口を育てること」が別々の話にはならないのです。
どちらも、赤ちゃんのお口を健全に育てるという同じ目的に繋がっています。
口呼吸があるなら、離乳食だけを変えて終わりにしない
「柔らかいものばかりだから、硬いものを食べさせよう」。それだけでは十分ではありません。
- 口がいつも開いている
- いびきをかく
- 舌が上顎についていない
- 食べるときの姿勢が崩れている
こうした状態があれば、なぜそのお口になっているのかを先に考える必要があります。
離乳食は、顎を育てる大切な機会です。
しかし、本当に見たいのはその一食ではありません。食べているときも、食べていないときも、赤ちゃんのお口がどう機能しているのか。
そこまで見ることで初めて、「離乳食から顎と歯並びを育てる」という意味が見えてきます。
なぜ歯並びが悪くなる?【口呼吸】
口呼吸が歯並びを悪くする——そう広く指摘されています。
子どもが口を閉じることができない。ですが、そこで「なぜ?」を理解してあげないとお子様の口呼吸は単なる「悪癖」としか目に映りません。
そのきっかけは本当に癖だったかもしれない。そうではなかったかもしれない。離乳食は、口呼吸の原因が持つ可能性の一面です。
口呼吸になる原因はおそらく、離乳食も含め、複合的。何かに収束するものではありません。ただ、問題はそこではありません。
何であれ、口呼吸(低位舌)の積み重ねは、中顔面の健全な成長を阻害し、骨格の問題へと進展します。その影には、人間の身体に24時間かかり続ける力、「重力」の存在。そしてその進展は、思いの外、早くて速い。
こうなると、「なぜ、口呼吸?」の答えは、どこかのタイミングで骨格の問題へと入れ替わります。赤ちゃんのお口を育てることと、矯正治療も無関係ではないのです。
- 口呼吸は、イラストの青矢印の力を失わせます。
- 支えのなくなった中顔面(上顎)は、重力の影響から、成長方向を下方へ向かわせます。
- 同時に、舌が上顎から離れることで、歯列を境とする内外の力のバランスが崩れ、顎が狭小化する向きに力が加わり続けます
- これらが、歯並びが悪くなる原因、「中顔面の骨格的な発達不良」です。
- その結果、鼻腔や副鼻腔が狭くなり、鼻呼吸がしづらくなります。口呼吸の常態化、悪循環の入り口です。
口呼吸の原因が「骨格」の問題に入れ替わってしまったら、改善のハードルは格段に上がります。「何をどこまで改善できるのか?」という不確定な要素まで浮かび上がります。
親御様の判断による様子見は、赤ちゃんの成長に大切な過程を見逃すことになりかねません。口呼吸・いびき・受け口は、赤ちゃんからのSOSサインです。
顎の骨格の成長が果たしていい方向なのか、そうではないのか、その証が「まるい顎」と「三角の顎」の違い。
「三角の顎」は、口呼吸が日常的になり、骨格にネガティブな影響が表出している子どもの典型的な顎の形です。
これが「顎が小さい」の正体です。
こうなってしまうと「抜歯?歯列?骨格?」と矯正治療の負担が現実になってきます。そうならないように、矯正治療は最後の補正手段と考えられてください。まるい顎に育ち、歯並びを整える程度の矯正治療で済めば、親御様の「赤ちゃん歯科」は大成功です。
赤ちゃん歯科とは知識:離乳食はその一面
当院の赤ちゃん歯科では、親御様にまず「知っていただきたい」と考えています。現代社会において、なかなかすべてを叶えることは難しいですが、知ってさえいれば判断材料にはなります。
赤ちゃん歯科は、何か特別な治療を行うための存在ではありません。食べ物や空気の入り口である鼻や口がどれほど大事なものか。そして現代、そこにどれほどの問題を抱えているのかを親御様へお伝えするために赤ちゃん歯科はあります。
赤ちゃん歯科、その目的は、お口の問題から派生しうる様々な問題の「予防」です。
「生まれつき」であろうが、「成長の結果」であろうができることはあります。決して「仕方がない」と諦めないでください。
歯並びは赤ちゃん期からの積み重ねの結果
赤ちゃんの時期から上手にお口を育ててあげられれば、将来的に矯正治療が必要なくなるか、その負担は小さいものになる可能性が高くなります。それは歯並びのことにとどまらず、健康そのものにも関わってきます。
質の良い呼吸が、質の良い生活や質の良い睡眠の基礎となります。
MFT(口腔筋機能療法)など、一部の矯正治療も同様の視点となりますが、赤ちゃん歯科はさらにその前の段階のお話。当院では、赤ちゃんの歯医者のスタートは、生後すぐからと考えています。
「それらを知らずにきてしまった‥」などで、成長が進み、ある程度骨格ができあがってしまった。そうなってしまった場合の次のアプローチが、ランパセラピー(矯正治療)です。目的は同じ、「骨格の正しい成長」です。
つまり、予防的意義の「赤ちゃん歯科」、治療的意義の「ランパセラピー」となります。
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この記事を書いた人
院長:岡井有子
大阪歯科大学大学院歯学研究科修了:歯学博士
医療法人社団セントワ理事長
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