コラム
子供のいびきが続くなら「鼻づまり」より先に疑うべきこと|骨格の発達不良に続く鼻腔狭窄と気道閉塞
なぜ「いびき」を歯科が話すのか? 耳鼻科ではなく歯科的介入で呼吸が取り戻せる理由
子どものいびきは、多くの場合「鼻がつまっているから」と説明されます。実際、耳鼻科でそう指摘された親御様も少なくないはずです。
でも、耳鼻科へ行っても薬をもらうだけ。それでも毎晩のようにいびきをかく。口を開けて苦しそう。
もしかしたら、鼻づまりは「原因」ではないかもしれません。
子どものいびきの多くは、鼻や喉そのものより、顔の中心にある骨格——中顔面の発達に問題があります。
口呼吸が習慣になると、上顎の骨は本来の方向に育てず、鼻腔も気道も十分な容積を持てないまま成長します。鼻づまりはその「結果」であって、原因ではないのです。

鼻腔や気道の問題と歯列の問題は、上下の顎骨が深く関わります。
一般的な矯正治療とは、上下顎骨の歯が生えている限定的な領域へのアプローチです。
矯正治療「ランパセラピー」では、顎骨を中心とした骨格自体を整え直すことから歯列矯正をみています。
既存の矯正治療のイメージからすれば「大げさ」ですが、今その先入観はしまってください。これらは既存の矯正のやり方では対応が難しかったから、もしくは「矯正=審美」だから、大きく伝えられなかっただけの話です。
例えば、歯並びが悪い原因として指摘される「顎が小さい」。これは生まれつきのサイズの問題であることは多くありません。本質は、生活環境・生活習慣による「骨格の劣成長」です。
つまり、上顎(中顔面)の正しい成長が叶わなかった。これは上顎だけの問題にはならないことは明白です。骨の複合体として、頭蓋骨は成り立っています。
要は「あっちが歪めば、こっちも歪みます」。
歯列矯正を考えます。局所的に歯並びだけ整えても、骨格の変化は望めません。それどころか、処置によっては、他に悪影響が及ぶこともあり得ます。
もしかしたら、数十年先の話なんて、ご本人でさえ考えていないかもしれない。今がよければいいでは危ういーーこれが当院の考えです。
親御様にお伝えしたいのはここです
「上顎(中顔面)の正しい成長が叶わなかった‥」こうなる原因は舌が上顎についていないこと、要するに「口呼吸」です。
そして、よくよく思い返してみてください。「顎が小さい」「出っ歯・受け口」「ガミースマイル」、原因は「骨格」とすでに言われています。ですが、既存の矯正歯科のやり方では、骨格への実効力は得られません。だから、歯を並べるために「やむなく抜歯」です。
頭蓋骨を改めて見てください。ほとんどの人は、遺伝子によって正しい設計図は受け継がれています。しかし、生後の成長によって、必ずしも正しい発達が得られなかった。だから、顎の骨格は歪み、歯並びが悪くなります。呼吸にも支障が出て、いびきや鼻づまりとして表出します。
歯列の問題も呼吸の問題も原因は同じ場合がある。これらを頭蓋骨全体の問題と捉え、俯瞰で見る必要があります。
呼吸器系・耳鼻系疾患にお悩みのお子様にとっても、外科矯正適用とされたお子様にとっても、ランパセラピーは有効な手段となります。
費用を含めたご負担が、ご家庭にとって小さくはないことは十分に承知しています。ただ、矯正治療をご検討中なのであれば、単純な価格比較ではなく、治療ごとの費用対効果を未来へのイメージからお考えください。
「矯正治療」で鼻腔や気道へアプローチ
いくつかの矯正治療の中には、鼻づまりやいびきといった症状の改善が記載されていることをご存じの方もいるかもしれません。ランパセラピーもその中の一つです。
「なぜ改善が見込めるのか?これらの矯正治療の違いは何なのか?」は知りたいことですね。
そのためには、「何が鼻づまりやいびきの原因となっているのか?」を理解していただかなくてはなりません。
その前提が「本来あるべき健全な骨格であれば、それらは起こらない可能性が高い」です。歯並びが悪くなることも同様です。

中顔面と呼ばれる領域(鼻廻りのあたり)の骨格の下方成長が、歯科・耳鼻科に関連する様々な問題の大きな要因になります。
歯並びの悪さに始まり、鼻づまりやいびきなど、これらの原因の多くがこの中顔面の発達の問題と考えられます。
そしてこの下方成長は、多くの場合、口呼吸により誘引されます。
結論、対処すべきは、口呼吸です。
鼻づまりやいびきの原因
「鼻がつまっていれば口呼吸」は容易に想像できます。
日常化された口呼吸は、中顔面の下方成長を導きます。この下方成長によって中顔面の骨格に歪みが生じることで、鼻腔が狭くなり、鼻もつまりやすくなってしまうのです。
ここでのお話しで違和感を感じられた方はいらっしゃいますでしょうか?
- 鼻がつまっているから口呼吸
- 口呼吸は、中顔面の下方成長を導き、骨格を歪ませる
- その結果、鼻腔が狭くなり、鼻がつまりやすくなる
ちょっとおかしな話です。ここでの一連の流れに該当する場合、初めの「鼻がつまっているから口呼吸」は当てはまりません。
大切なことがあります。ある程度の年齢になったお子様の口呼吸を気にされる親御様は多くいらっしゃいますが、赤ちゃん期の口呼吸から気にされる親御様は多くはいらっしゃいません。むしろ「可愛い」と好意的にも受け取られがちです。
「あっ‥」と思われた方もいらっしゃいますでしょうか。以下がより適切な流れです。
- (赤ちゃん期からでも)口呼吸は、中顔面の下方成長を導き、骨格を歪ませる
- その結果、鼻腔が狭くなり、鼻がつまりやすくなる(気道も狭くなります)
- 口呼吸が気になるようになった時には、すでに鼻がつまりやすい状況になっていた
ここで当てはまるのが「鼻がつまっているから口呼吸」となります。では、なぜ赤ちゃんの口呼吸が起こるのかについては、別コラムがありますので後ほどご覧ください。年齢帯が上のお子様にも関係あります。鼻がつまっていないのに口呼吸になる原因があるのです。
さらに口呼吸では、必ず舌の位置が下がり、舌自体が気道を狭くさせます。これがいびきの大きな要因です。そもそも鼻腔に問題があれば、口呼吸になるのは当然の話です。口呼吸といびきはほぼ同義と考えられてください。



2021年アメリカで、睡眠障害(いびきや睡眠時無呼吸)と学習障害や衝動的行動との、脳医学的な関連性に関する論文(概要記事)が発表されています。
抜粋:定期的にいびきをかく子供は、脳の構造変化がみられ、それが集中力の欠如、多動性、学校での学習障害など、いびきに関連する行動上の問題の原因となっている可能性がある。これはメリーランド大学医学部(UMSOM)の‥‥
実は、口呼吸もいびきも、身体としては「息苦しさ」を感じます。
なんとか空気を取り入れようと、無意識的に気道を拡げようとした結果、「受け口」や「姿勢が悪くなる」という現象がみえてくる場合があります。寝ている時は、それさえもできなくなるので、そのままいびきとして現れます。
鼻はつまってないのに、なぜか口呼吸。この気付きがとても大切です。

人生のスタート地点。赤ちゃんは、基本的に「鼻呼吸しかできない」構造を持って生まれてきます。ただ、鼻呼吸が難しい=生命の危機では困りますので、さまざまな応急処置を駆使して呼吸を確保します。でも、基本的な構造では「鼻呼吸しかできない」なんです。
なぜ、赤ちゃんは口で息をすることが難しいのか。赤ちゃんの「義務的な鼻呼吸」という事実は、人間の進化におけるメカニズムに基づいています。
解剖学的な構造
- 喉頭(こうとう)の位置が高い:赤ちゃんの喉頭は、大人に比べて非常に高い位置にあります。
- 軟口蓋と会蓋(えがい)の接触:赤ちゃんは口の奥にある「軟口蓋(柔らかい天井)」と、喉の蓋である「会蓋」がほぼ接触した状態にあります。これにより、鼻から肺への空気の通り道が「独立した一本のパイプ」のようになっています。
この構造の最大のメリットは、母乳を飲みながら呼吸を続けられることです。「飲む」と「呼吸」を同時に行うための設計なんですね。
- 飲み物のルート:口 → 喉の両脇を通って食道へ。
- 空気のルート:鼻 → 軟口蓋の後ろを通って気管へ。
この2つのルートが分離されているため、赤ちゃんは窒息のリスクを最小限に抑えながら、長時間おっぱいを飲み続けることができます。大人がこれをやろうとすると、飲み込む瞬間に呼吸を止めなければなりませんが、赤ちゃんにはその必要がありません。
なぜ「口呼吸」に切り替えられないのか?
生後数ヶ月までの赤ちゃんは、舌がお口の空間に対して相対的に大きく、かつ喉頭の位置が高いため、口から吸い込んだ空気をスムーズに気管へ送り込むための空間(中咽頭)が十分に確保されていません。
そのため、鼻がつまると赤ちゃんはパニックになり、激しく泣きます。「泣く」という行為は、赤ちゃんができる「強制的な口呼吸」でもあります。
いつから口呼吸ができるようになるのか?
生後4カ月〜6カ月頃になると、成長に伴って、喉頭が徐々に下の方へ降りてきます。
すると、軟口蓋と会蓋の間に隙間ができ、口からの空気も気管へ入るようになります。この時期から、人間特有の複雑な「発語」が可能になり、同時に離乳食を食べる準備が整います。
本来、「生後数ヶ月までは鼻呼吸しかできない」ように設計されている通り、人間は鼻呼吸がデフォルトです。しかし、成長の過程で上顎骨(中顔面)の成長に問題が生じ、鼻腔が狭くなってしまうと、本来は「緊急用」であるはずの口呼吸が、「常用」になってしまいます。
持って生まれた鼻呼吸のシステムが、成長とともに崩れてしまうのか、それとも維持できるのか。その鍵を握るのが「口腔域の骨格の正しい成長」。主役は「上顎についた舌」です。となると、そのSOSは、「口呼吸・いびき・鼻づまり‥」として現れます。つまり、主役がその仕事を降りてしまっている状態です。
要約:口呼吸は何を失う?

イラストの赤矢印は中顔面の健全な成長方向です。
- 口呼吸により舌の支えがなくなることで、中顔面は重力の影響から下方へ成長します。その結果、上顎骨に歪みが生じ、鼻副鼻腔を狭くさせます。
- 口呼吸により下がった舌と、上顎の下方成長に連動して下がった下顎の動きが気道を狭くさせます。
- 上顎から離れた舌の影響で、上顎の正しい成長は阻害され、歯並びが悪くなります。
いずれも原因は、舌が上顎につかないこと(=口呼吸)です。
日常的に舌が正しい位置にきちんとあれば、中顔面の骨格はより健全に近い成長をします。これが「本来あるべき健全な骨格であれば、それらは起こらない可能性が高い」の理由です。
つまり、口呼吸によって、正しい呼吸機能ときちんと並んで生えるはずだった歯列を「失う可能性」が高くなります。
鼻づまりやいびき、そして不正歯列は、口呼吸による骨格の劣成長によって表出している「悩み事」なんですね。
鼻づまりやいびきを改善する
親御様にとっては「これらを改善するにはどうしたらいいのか?」が大切です。そしてこれは「口呼吸を鼻呼吸に変える」とほぼ同義になります。舌が上顎についていたら、当然ですが口呼吸はできないですから。
鼻づまりやいびきの改善を視野に入れた矯正治療では、お口まわりの筋肉を整えていくことなどを目標に、トレーニングや器具を併用したりして行う治療があります。
機能的矯正ともいわれます。お口の修正が可能なうちに「機能を正して、舌をきちんと上顎につけましょう」との考えをもとに行われますが、これらには重症化の予防的な側面の方が強いです。
しかしです。骨格の問題が深刻となり、上顎に舌をつけるスペース自体がもう足りない、すでに鼻腔が狭くなり、舌を上顎につけると鼻呼吸じゃ苦しいとなると、これらの問題を解決しないことには鼻呼吸は無理な話です。
当院はランパセラピー専門医院ですので、他の矯正治療の取り扱いがありません。他の矯正治療の効果に関しては、無責任にいえませんが、正しいとはいえない成長を重ね、すでに日常となってしまった「口呼吸を鼻呼吸に変える」ことは、そう簡単な道のりではありません。
とはいえ、矯正装置で機械的に拡げることも、手術適用の外科矯正も仕方がないとは思えません。RAMPAという選択肢では、骨格を健全的に成長させることができます。
耳鼻科領域に歯科的アプローチ

イラストからイメージしてみてください。
既存の矯正治療がアプローチするのは、上下の顎骨の歯が生えている限定的な部分です。ですが、口呼吸になると、上顎の位置は下がります。上顎を支えるもの(舌)がないところに重力がかかっているからです。上顎が下がれば、下顎も下がります。
その上でも、矯正装置のほとんどが力をかけるのは「歯列」です。特に、上顎骨の歪みは「鼻腔・副鼻腔」に関係します。

| 発生時期 | 発達のピーク | 完成時期 | 特徴 | |
|---|---|---|---|---|
| 上顎洞 | 胎生3カ月頃 | 歯の生え替わり期 | 15歳〜17歳頃 | 最大の副鼻腔・上顎骨の成長に直結 |
| 篩骨洞 | 胎生初期 | 出生〜幼児期 | 12歳頃 | 最も早く完成・眼窩の間にあるハチの巣状の空洞 |
| 蝶形骨洞 | 3歳頃 | 10歳前後 | 15歳頃 | 頭蓋骨のほぼ中央・脳のすぐ下に位置 |
| 前頭洞 | 4歳〜6歳頃 | 思春期 | 20歳前後 | 最も遅く完成・額の部分・個人差が大きい |
すでに鼻の問題が深刻であったならば、矯正治療の前に、まず耳鼻科を受診されてくださいとの記載も多いです。しかし、耳鼻科を受診しても、骨格的・物理的問題が根底にあるならば、耳鼻科で解決できるものか分かりません。
矯正治療(ランパセラピー)という歯科的アプローチが、実効的な改善の選択肢になります。
ランパセラピーは、矯正装置の力を借りて、中顔面を上前方方向へ牽引することによって、その成長方向を変化させ、健全な骨格へと整えることから、健全な口腔機能や呼吸機能を取り戻すことを目的としています。その具体例が、「鼻副鼻腔の容積・気道の容積・歯が生えるスペース」を取り戻すことです。
この一文がそのまま「なぜ改善が見込めるのか?」、そして「他の矯正治療との違いは何なのか?」を表しています。健全な骨格とは、中顔面が上前方へ成長した形です。その過程で必要な上前方方向への力のベクトルが得られるのが、RAMPAのメカニズムです。
骨格から矯正治療を考える。歯科的アプローチから全身領域へアプローチする。この概念が、ランパセラピーの独自性です。


※CT画像は10歳のお子様の治療前と約半年後の治療経過です。上顎が上方(実際は上前方)に成長変化しています。
ランパセラピーは、拡げたいところを機械的に拡げる治療ではありません。骨格の成長方向を変えてあげる。今、舌はその役割を担えないけれど、その環境が整うまでRAMPAの装置が代わりを担います。
その上で、鼻づまりやいびきなどの改善が見込めるとされている他の矯正治療との「違い」と「理屈」を見比べてみてください。
ずっと悩んでいた、お子様の鼻づまりやいびきは、耳鼻科ではなく歯科で解決できる可能性があります。

お子様のいびきは、一時的なものかもしれません。そのうち治るかもしれません。
でも、骨格の発達に問題があるなら、待つほど取り返しにくくなります。
上顎の骨は、成長期に正しい方向へ導びく必要があります。鼻腔も、気道も、効果的に拡げられる時期は限られています。「様子を見ましょう」という言葉が、結果として選択肢を狭めてしまうことがあるのです。
ただ、逆にいえば——成長期ならば、十分に変えられます。そのアプローチが正しければ、いびきの根本から変えることができます。
いびきを「子どもだから仕方ない」と思っていた親御様が、骨格の問題だと知った時、ついこう考えてしまいます。「もっと早く知れればよかった」と。
今夜、眠っている子どものいびきが気になるなら——それが、動くべきタイミングです。

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この記事を監修した人
こどもと女性の歯科クリニック
院長 岡井有子
看護師として京都府内産婦人科等勤務を経て、大阪歯科大学に入学。大阪歯科大学大学院歯学研究科で小児歯科学を学ぶ。歯学博士。
2017年東京都港区麻布十番にランパセラピー専門医院「こどもと女性の歯科クリニック」開院。
2024年「医療法人社団セントワ」開設。同法人理事長就任。
日本小児歯科学会・日本小児耳鼻咽喉科学会・日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会・日本ダウン症学会所属。
RAMPA研究会・赤ちゃん歯科ネットワーク所属。
2025年European Conference on Dentistry and Oral Health(パリ)、MENA Congress for Rare Diseases(アブダビ)などにおいて、ランパセラピー学会発表。
プライベートでは2児の母として忙しい毎日を送っている。
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