コラム

口育って何?|歯医者しか伝えられない子どものお口の育て方「生活習慣から呼吸・歯並びを育てる」

子どもの生活習慣とは広義の矯正治療 呼吸・食・姿勢から始まるお口育てと、もしもの時の「次」

セミナーを受ける親子

口育とは

「口育(こういく)」とは、赤ちゃんのころから、お口の機能を正しく育てていくための考え方です。

「歯育(しいく)」という言葉もあります。それぞれに異なる成り立ちなどはありますが、明確な定義を持って区別されているわけではありませんので、「ほぼ同義」でもそう支障はないと思います。

お口の役割は、歯で噛むことだけではありません。食べる、飲み込む、話す、そして鼻で呼吸する。こうした機能は、生まれた時から完成しているわけではなく、毎日の生活の中で少しずつ育っていきます。

では、口育では何をするのでしょうか——

口育は、何も特別なトレーニングだけを指すものではありません。授乳や抱っこの姿勢、離乳食、噛み方、舌の位置、鼻呼吸、普段の姿勢、身体の使い方。こうした日常そのものがお口の発達に関わっています。

私たちは、口育とは「その時だけ頑張る取り組み」ではなく、生活習慣そのものだと考えています。

口育で特に大切にしたいのは、正しい鼻呼吸、正しい舌の位置、そして健全な顎の成長です。舌が上顎にあり、鼻で呼吸できる環境が整うことは、歯並びだけではなく、鼻腔・気道まで含めた骨格の発達にも関わります。

ですから、口育は「むし歯にならないための育児」でも、「歯並びをきれいにするためだけの取り組み」でもありません。

子どもが一生使う「口腔機能と呼吸の土台」を育てること。

そしてもう一つ、大切なことがあります。

一生懸命に口育に取り組んでも、すべてのお子様が同じように育つわけではありません。口が開く、鼻呼吸ができない、顎が狭い、歯並びが悪くなってきた——

その時に必要なのは、「口育が失敗した」と考えることではなく、なぜうまく育たなかったのか、その原因が生活習慣の範囲なのか、すでに骨格の問題へ進んでいるのかを評価することです。

口育とは何をすることなのか、なぜ呼吸・舌・姿勢・食事が繋がるのか、そして「口育の次」とは——

目次

    歯育と口育は何が違う?

    「歯育(しいく)」という言葉は、「口育」より以前から使われており、少なくとも2006年には、乳幼児期から歯や口腔環境を健全に育てる取り組みとして「歯育」が提唱されていました。

    一方、「口育」は、歯だけではなく、呼吸・嚥下・咀嚼・舌・口唇などの「口腔機能がどう育つか」に、より強く焦点を当てた考え方です。

    「歯育は歯磨き、口育は歯並び」という単純な違いではありません。どちらも子どもの口を健全に育てるという点では重なっています。ただ、歯育が「歯・口腔環境を育む」という視点から始まったのに対し、口育では「食べる・飲み込む・呼吸する」といった機能そのものの発達を、より中心に据えています。

    口育は、予防的矯正

    こどもと女性の歯科クリニック

    視点を変えてみてください。

    毎日の食事の仕方、呼吸の仕方、姿勢、授乳の体勢——これらはすべて、子どもの顎と口の発育に影響を与えています。

    つまり、日々の生活習慣そのものが、広い意味での矯正治療です。よい習慣は顎を正しく育て、悪い習慣は顎の成長を妨げます。矯正装置をつける前の日常こそが、歯並びの未来を決めています。

    お気付きになりましたでしょうか?

    すでに歯並びの問題ではなく、骨格の成長の問題なのです。

    歯科医師として伝えたいのは、矯正治療で「悪くなった歯並びを後から整えれば解決」ではなく、「本来は矯正なんて必要にならないことがベスト」だということ。

    歯並びが悪いことは、骨格の劣成長によって現れる現象の一面です。矯正治療の多くでは、その一面、歯並びにしかアプローチができません。

    口育という視点を早く知っておくことが、将来的な矯正治療の可能性を下げる、つまり骨格の劣成長の可能性を下げる最初の一手になります。

    つまり、口育とは何歳からではなく、「今から」

    赤ちゃんは、ママのお腹で十月十日を過ごし、生後0日目からもその成長は続きます。口育は、悪くなってしまったものをよくする取り組みではありません。これから上手に育てていく——ならば、そのスタートは可能な限り早く、これが私たちの答えです。

    そして、もう一つ大切なことがあります。

    口育といわれる時期は過ぎてしまったかもしれません。しかし、その取り組みの重要性は、実は子どもどころか、大人であっても同じです。「育てること」も「これ以上悪くしない」も——それどころかまだ改善も望めるかもしれない。やるべきことは「口育」と一緒です。

    私たちが日々の診療を通して見てきたこと——コロナ禍のマスク生活や自粛生活で、歯並びが悪くなってしまった大人が急激に増えました。そして、上顎が下がってしまっている大人も多いです。おじいちゃん、おばあちゃんになっても「三角の顎」の方も、実際少なくないのです。

    口育の実践は生まれてからだけど、知ることは妊娠期から

    お子様ごとに成長スピードは違います。目安とされた時期より「遅い」と心配し過ぎず、医療と共有されてください。

    成長には正しい順序があります。「目安より早く立った」「ハイハイの時期なんてなかった」と、一見成長が早いことを好意的に受け取られてしまう空気の方が要注意です。

    必要な過程を飛ばしている可能性があります。ずり這い、ハイハイ、意味のある必要な過程です。赤ちゃんは、これらの動きで呼吸筋を含む抗重力筋を鍛えています。

    これらが鍛えられていないと——呼吸や姿勢がすでに心配です。

    以下の表の記載は目安としてご覧ください。

    胎生期の口腔機能の発達
    出生後の口腔機能の発達
    出生後の発達のサインと口育

    口育とは口腔機能を育てること

    一般的な口育では「姿勢・食」などに焦点を当てられます。意外性から考えれば「足」という視点もあります。どれも無視できません。

    ですが、それらで十分かといわれれば必ずしもそうではありません。口育の考えと理屈を理解し、無理のない生活習慣としてどう落とし込めるか——生活習慣そのものが口育です。

    その時だけ行う、トレーニングのような取り組みではありません。

    口育として、お伝えしたいことは多くあります。具体的に何を行えばよいのか。それらは、インターネット上でいくらでも探せます。ただ、必ずしも、インターネット上の情報が正しいかどうかは分かりません。それらの真偽が怪しければ、育児書も多く出版されています。

    そこに理屈があり、納得ができるかどうかを大切にしてください。それが口育の入り口と土台です。

    そもそも口腔機能とは?

    口腔機能とは主に以下の3つの役割を担う機能です。

    • 食べる(摂食・嚥下)
    • 話す(発音・発語)
    • 呼吸をする(鼻呼吸◎・口呼吸✖︎)

    これらの3つの機能は、「口唇の閉鎖」「舌の運動」「軟口蓋の挙上」などの機能によって支えられます。これらは相互関係にあるので、何かの機能が落ちると、その他の機能不全に繋がる恐れがあります。

    つまり、お口とは全身から総合的に育ててあげないと、何かしらの機能低下が何かしらの現象、例えば上手に食べられない、発音がおかしいという現象として表出します。その先にあるのが、歯科的にいえば歯並びの悪化、RAMPAの視点からいえば骨格の発達不良による呼吸機能の低下です。

    危ういのは、親御様の意識はいつの間にか「歯並び」へと移り、上手に食べられないことや発音がおかしいことにはいつの間にか慣れてしまい、「癖」や「個性」ともなってしまうことです。歯並びが悪いことには骨格の劣成長、呼吸の問題が潜んでいる可能性を忘れないでください。そして、拡大床やMFT、機能的矯正に骨格変化への実効力はありません。拡大床で拡げるのは歯列、MFTや機能的矯正の主目的は筋機能の整備です。

    実は、口育の時期を過ぎると、困ったことが起こります。子どもが大きくなった時、呼吸の問題は耳鼻科領域になります。鼻炎・副鼻腔炎、いびきや睡眠時無呼吸まで——これらで歯科を受診することはまずありません。歯科では診断も下せません。

    むし歯処置やむし歯予防ならば、歯科の領域です。歯並び・審美もそうです。しかし、歯並びと呼吸、これらは到底別々に考えられる関係性ではありません。歯科と耳鼻科で対処が分かれてしまい、困ってしまう前に、お子様のお口を育ててあげてください。

    いくつかの歯科的問題と耳鼻科的問題、その根は赤ちゃん期からの「口腔機能」の成長にあります。

    口腔機能発達不全症

    お口ポカン(口唇閉鎖不全)は「口腔機能発達不全症」の評価項目の一つで、2018年から検査と管理に保険が適用されるようになりました。

    ただ、保険が適用されるのは評価と管理です。そこから勧められる治療は、多くが自費です。

    そして、口の周りの筋肉を鍛える訓練(MFT)の有効性については、355本の文献を検討した研究で、基準を満たしたものは4本しかなく、そのすべてが結果の信頼性に問題があると評価されています[1]。

    病名がつくこと自体は、悪いことではありません。ですが、お口ポカンは子どもの永遠の課題でもあります。「口が開いている」こと自体を疾患としてしまうと、なぜ閉じていられないのかが、どこかずれていきます。そうならないように——それが口育です。

    [1]Homem MA et al. Effectiveness of orofacial myofunctional therapy in orthodontic patients: A systematic review. Dental Press Journal of Orthodontics, 2014. PMC4296637.
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4296637/

    口育の目的とその先にあるもの

    「口育」とは、お子様の未来の健康を土台から支える取り組み。お子様の将来を考えた場合、「口育」は矯正治療よりも重要な取り組みです。つまり——

    1. 赤ちゃん期から口育に取り組むことで、たとえ矯正治療が必要になったとしても、軽い負担で済む可能性が高くなる。
    2. 赤ちゃん期の口育を軽視してしまうことで、矯正治療の負担が重くなる。ここでもっと大切なのが「どこまで改善できるかが不透明」になってしまうことです。そして審美だけでは済まされない、「骨格」や「呼吸」という問題が高い確率で関わってきます。

    そして、口育が目指すもの——

    1. 正しい鼻呼吸の獲得
    2. 正しい舌の位置
    3. 正しい顎の成長

    これらが全部が崩れる状態、それが「口呼吸」です。


    口育のすべてを親御様が理解し、実践するのは大変です。ですが、心に留めておいてください。

    ちゃんとできているかどうか分からない——何となくかもしれないけれど、日常的に「鼻呼吸」ができていれば、それは概ねよい方向です。「口呼吸」が日常となっていれば、何かがおかしい可能性が高いです。そして——

    • 鼻呼吸ができていれば「まるい顎」
    • 口呼吸になっていれば「三角の顎」

    に、育ちやすくなります。口育が目指すのは「鼻呼吸」と「まるい顎」です。

    赤ちゃんは「鼻呼吸」がデフォルト設定

    口育の柱:呼吸・食・姿勢のポイント

    口育で注意すべきポイントは主に以下の3つです。

    鼻呼吸◎・口呼吸✖︎

    鼻呼吸の確立が最優先

    • 眠っているとき口が閉じているか確認
    • 鼻づまりが続く場合は耳鼻科へ
    • お口ポカンは早めに専門家に相談
    • 鼻呼吸は口呼吸より酸素摂取効率が高い研究もある
    • いびきは気道の狭さのサインかも

    BLW(離乳食)の提案

    顎への咀嚼刺激

    • 月齢に合った固さの食事を選ぶ
    • よく噛む習慣が顎の骨を育てる
    • 柔らかすぎる食事は発育刺激が不足
    • BLWで自分で食べる力を育む
    • 離乳食の固さを段階的に上げていく

    姿勢を悪くさせない

    骨格・顎発育の土台

    • Cカーブ抱っこを意識する
    • 授乳・抱っこの姿勢を定期的に見直す
    • 普段の遊びから体幹を育てる
    • 姿勢の悪さは舌骨の位置を下げる
    • 左右をバランスよく

    具体的にお口育てとは、何をする

    口育の文脈で推奨される生活習慣には、様々なものがあります。

    • よく噛んで食べること——咀嚼の刺激が、顎の骨の発育を促します。柔らかいものばかり食べていると、顎が十分な刺激を受けられず、成長が滞ります。
    • 正しい姿勢を保つこと——姿勢の悪さは、首や肩まわりの筋肉を緊張させます。その緊張が舌骨を引き下げ、舌の位置を下げ、口呼吸を誘引します。姿勢と呼吸は、繋がっています。
    • 鼻呼吸を習慣にすること——口呼吸は、鼻呼吸に比べて酸素の取り込み効率が低くなります。副鼻腔で産生される一酸化窒素(NO)は、鼻呼吸によって肺へ運ばれることで、肺の血管を拡張させ、酸素摂取効率を高める役割を持ちます。口呼吸では、このメカニズムが機能しません。
    • 正しい抱っこ・授乳の姿勢——赤ちゃんの首や肩への負担を最小限にすることが、舌骨の位置を保ち、鼻呼吸を促す環境を作ります。

    これらは、日々の生活の中で顎と口の発育に影響を与え続けます。その意味では、生活習慣そのものが広義の矯正治療です。

    ですが、これらの習慣を意識し、実践してきたご家庭の中にも、お子様の顎が三角になってしまうケースがあります。それは、習慣への取り組みが足りなかったのではありません。骨格の劣成長が、生活習慣での介入が届く範囲を超えて進んでいる場合があります。

    口育における「足」の話

    当院の口育では、「足」の話は軸ではありませんが、理屈自体は無視してよいものではありません。足指・足裏全体を使い、重心を保って立っていないと、立位のバランスが崩れます。

    姿勢が悪い(お口ポカン・口呼吸)ことでの骨格的影響

    例えば、かかと側に重心がかかると、体全体でバランスを取り、頭側を前に突き出したような姿勢になりがちです。

    イラスト右側のような姿勢です。イラストは「舌骨」の問題を指摘するイラストですが、経緯はともかく、悪影響のきっかけになりかねないことは分かると思います。

    ただ、舌骨の話でも同様ですが、機能の問題として捉えられる期間はそう長くはありません。日常的な口呼吸は、いずれ構造(骨格)の問題として中身が入れ替わります。だから、そう簡単には改善できなくなってくるのです。

    重要:口育と矯正治療の間の空白は、歯医者だから伝えられます

    「顎をまるく育てましょう」と伝えることと、「なぜ、まるく育てなければいけないのか」を最後まで伝えることは、全く別のことです。そして「うまく育てられなかった場合、次に何をすべきか」まではなかなか伝わっていません。

    口育とは、乳幼児期の取り組みを指しますので、ある程度の年齢で区切られてしまうことも多いです。三角の顎、口呼吸、そうならないようにお口を育ててあげましょう。

    できたか、できなかったか、成功か、失敗か——

    では、うまくできなかった場合——ここに空白があります。

    「まるい顎」は、歯が並ぶためだけではありません

    口育の中心にあるのが、顎の形です。

    「顎をまるく育てましょう」という言葉は、口育の文脈でよく出てきます。まるい顎とは、上顎の歯列弓が横方向と前方向に十分に拡がり、なめらかなアーチを描いている状態のことです。これに対して、前方が尖り気味に狭くなった状態を「三角(もしくはV字)の顎」と呼ぶことがあります。

    まるい顎とさんかくの顎

    では、なぜまるい顎が大切なのでしょうか。「歯が並ぶスペースができるから」——正解ですが、半分です。

    まるい顎とは、鼻呼吸を支え、気道のスペースを確保し、歯がきちんと並ぶ土台ができている証です。そして、まるい顎に育てる主役が上顎についた舌です。

    上顎の骨の成長は、鼻腔や副鼻腔の形成にも関わります。上顎が十分に育っていれば、鼻副鼻腔の容積は保たれ、空気の通り道が確保されます。その必要条件が「鼻呼吸」です。

    口呼吸となり、舌が上顎から離れれば、上顎を成長させる力のベクトルは失われます。その結果、鼻腔は狭くなり、気道も圧迫されます。その証が「三角の顎」です。

    つまり「顎をまるく育てることは、子どもが一生、正しく呼吸するための環境を整えること」。歯並びは、そのプロセスの最後についてくるものです。口育を頑張りましょう——大切なことです。

    ただ「できなかった場合は——」も同じくらい大切なことなのです。

    さんかくの顎は「歯が並ばない形」ではなく、「呼吸の道が歪んだ状態」の証

    「口育が大切」と伝えられます。「まるい顎に育てましょう」と教わります。でも、うまく育てられなかったとき、次に何をいわれるかというと——多くの場合、矯正治療の話に飛びます。

    果たして、口育で謳われていたものって「歯並び」だけだったでしょうか。

    その間に何があるのか。なぜ、三角になってしまったのか。三角になってしまった顎で、今、何が起きているのか。この説明が、すっぽり抜けています。

    「歯が並ばないから矯正が必要」ではなく、「呼吸の道が歪んでしまったから、骨格からの介入が必要」——この認識の違いが、治療の選択を大きく変えます。

    口育の「次」を、誰も語らない

    口育を推奨する発信は増えました。しかしその多くは「顎をまるく育てましょう」で終わります。三角の顎になってしまった場合の「次」を語ることは、ほとんどありません。

    なぜかといえば、「次」を語るためには、骨格に介入する治療の話をしなければならないからです。そしてその話は、一般的な歯科の守備範囲を超えています。

    口育と矯正治療——目的が一致していないのであれば、途中で何かが抜け落ちています。

    骨格の問題へと進展した顎は、生活習慣の改善だけでは、元に戻りません。すでに骨格レベルで変化が生じている場合、口周りの筋肉をトレーニングしても、マウスピースを装着しても、骨格そのものを動かす力には届きません。

    必要なのは、骨格に直接介入する治療です。

    上顎の骨を、本来あるべき方向——前へ、そして上へ引き上げること。これによって、狭まっていた顎が拡がり、鼻腔と気道のスペースが回復し、舌が正しい位置に収まる環境が整います。歯並びは、この変化の結果としてついてきます。

    ランパセラピーは、この「上前方」への牽引を、三次元的に設計した装置で実現する治療です。査読付き国際論文において、ランパセラピー後の鼻腔・副鼻腔の体積拡大[2]と、頭蓋顔面の成長変化[3]が、実際の患者データとして報告されています。

    参考文献:

    両文献とも当院院長が共著者として参加しています。

    [2] Impact of RAMPA Therapy on Nasal Cavity Expansion and Paranasal Drainage. Biomimetics, 11(1), 5, 2026.
    https://doi.org/10.3390/biomimetics11010005

    [3] RAMPA Therapy: Effects on Craniofacial Growth Assessed by Coben Analysis and Statistical Evaluation. Journal of Clinical Medicine, 15(5), 1882, 2026.
    https://doi.org/10.3390/jcm15051882

    口育の先に何があるかを、知っておいてほしい

    「顎をまるく育てましょう」は正しいことです。でも、それだけでは足りないことがあります。

    お子様の顎が三角気味に見える。口が開いていることが多い。いびきをかく。鼻づまりが続く——これらのサインは、口育の「次」が必要になっているサインかもしれません。

    矯正治療が必要になることは、決して失敗ではありません。ただ、どんな矯正治療を選ぶかによって、歯並びだけが変わる場合と、呼吸から変わる場合があります。

    お子様の顎が今どんな状態にあるか。歯だけではなく、呼吸の土台として十分に機能しているか。まず、評価してみてください。

    口育が成功か、失敗かでは何も決まりません。そもそも完全な失敗などないはずです。親御様の頑張りは、お子様の成長の支えになっています。何もしない方がよかったなどありません。

    「口育」という取り組みに終わりはありません。矯正治療だって、口育といえば、口育です。

    生活習慣改善は広義の矯正治療

    「正しい生活習慣」が「口育」です。「0期矯正」という言葉を、当院は使用しませんが、そのイメージ通り、「口育」とは広義の矯正治療です。

    そして、生活習慣の影響によるお口の成長はよくも悪くも「早くて速い」です。そうはいっても、それは生活習慣、様々なご事情がご家庭ごとにあります。例え、うまくいかなかったとしても過度に責任を感じないでください。でも諦めないでください。ことは、お子様の呼吸や歯並び、将来に関わります。

    【n=1】のエピソードですがご紹介します——

    • 矯正治療を検討するほどのガタガタ歯並びのお子様。都会っ子らしく、ゲームやテレビ、運動不足が日常的でした。ある夏休み期間中まるまる、祖父母の家で過ごされたそうです。自然に囲まれながらの外遊び、雑巾がけのお手伝い——たった数ヶ月そのような生活を送っただけで、驚くほど歯並びが改善していました。歯科は何もしていません。
    • そして、こちらは我が子です。コロナ禍前までは姿勢もよく、我が子ながら順調な経過を辿っていると感じていました。しかし、コロナ禍に入り、外出自粛、オンライン授業、ゲームやテレビも黙認してしまいました。その結果、あっという間に悪くなりました。歯科医師としては、恥ずかしい話です。

    広く知られている口育は、ある期間で区切られてしまうことが多いですが、お子様の成長は続きます。

    「口育」ではやれるだけやったつもりだけど、完璧とはいかなかった。「三角の顎」「姿勢の悪さ」「口呼吸」がある。やれるだけやったのに——かもしれないですが、それは無意味ではありません。口育も続くのです。結論を出すのはまだ早いです。

    理屈を知れば、姿勢よく過ごす、運動・外遊びをする、これらも立派な矯正治療になるのはきっと理解できます。

    「それでも——」のときには、ランパセラピーがお手伝いします。

    口育とは知識の活かし方

    理解の深さこそあれ、「矯正治療って何?初めて聞いた!」という方は、そうはいないでしょう。しかし、「口育」の認知はまだまだ及んでいません。言葉の選び方には語弊もあるでしょうが、「矯正治療」も「口育」も親御様に大きな負担をかけます。

    まだ子どもなのに、そこまでしなくてはいけないの——矯正治療をご検討の親御様から伺う言葉です。RAMPAの視点からいえば、子どもだからこそ、なのですがお気持ちは分かります。

    「口育」も同じです。出産という一大イベントを乗り越えたら、もう次——

    ただ、負担の意味は同義ともいえません。矯正治療の負担は、主に経済的負担。

    口育の負担は、時間や、労力といった親御様の物理的コストです。なおさら重荷になります。親御様の負担を減らしてくれるかのように、一見優しい便利グッズも売られています。実はこれらの利便性が、口育の重要性を薄めてしまい、赤ちゃんの成長に不利益となっている場合があります。

    市販の離乳食も忙しい時には仕方がありません。おしゃぶりだって必要な場面があるでしょう。ですが、知ってさえいれば、少し頑張れるかもしれません。

    日々の仕事、家事、育児——その中での口育は大変です。それでも当院はその大変さをそのままお伝えいたします。耳障りのいい言葉で伝えても、それが赤ちゃんの不利益になるなら、それは親として望むことではないと思うからです。

    だからといって「全部が全部」が難しいのは私自身も体験しています。私たちは、「伝えるだけ伝えたからあとは頑張って」ではありません。その負担のいくらかは当院が伴走します。

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    この記事を書いた人

    こどもと女性の歯科クリニック院長|岡井有子
    麻布十番・広尾:こどもと女性の歯科クリニック

    院長:岡井有子

    大阪歯科大学大学院歯学研究科修了:歯学博士

    医療法人社団セントワ理事長

    所属学会

    • 日本小児歯科学会
    • 日本小児耳鼻咽喉科学会
    • 日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会
    • 日本ダウン症学会

    所属研究会

    • RAMPA研究会
    • 歯科保健医療国際協力協議会
    • 赤ちゃん歯科ネットワーク

    2025年学会発表抜粋

    • European Conference on Dentistry and Oral Health
    • MENA Congress for Rare Diseases
    • CMBBE
    • 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

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